ICESat

ICESat（アイスサット）

ICESatは、アメリカ合衆国のNASAによって開発された地球観測衛星で、極地における氷の状態をモニタリングするための新しい技術を用いています。この衛星は、レーザー高度計（ライダー）を搭載しており、氷床や海氷の厚さを測定することによって、地球温暖化の影響を評価するための貴重なデータを収集しています。さらに、ICESatの観測によって得られる情報は、雲やエアロゾルの状態、海面の変動、土地の標高、植生状況などの環境変化の理解にも寄与しているのです。

研究の背景

ICESatのプロジェクトは、1998年にNASAの地球科学部門の一環として始まりました。これは、ライダーを用いた地球科学の観測技術として初めての試みです。衛星はボール・エアロスペース＆テクノロジーズ社のプラットフォームBCP-2000に、ゴダード宇宙飛行センターで開発された地球科学レーザ高度計システム（GLAS）を搭載し、2003年1月13日にカリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。

ICESatは、高度590キロメートルの軌道に投入され、設計された運用期間は3年でしたが、目標として5年間の運用を計画していました。当初はレーザーが3基搭載される予定でしたが、1基目の故障により残された2基のレーザーを使用し、観測は断続的に行われました。こうした運用により、2003年2月から2009年10月までの約7年にわたって、南極や北極、グリーンランドにおける氷の経年変化データを集めることができました。

観測成果

ICESatは、そのデータを通じて、温暖化の進行による極地の氷床と海氷の減少を裏付ける重要な情報を提供しました。そのデータは、米国氷雪データセンター（NSIDC）を介して公開され、多くの研究者によって利用されています。例えば、2008年には南極のバード氷河において、氷下湖で融けた氷が原因で氷河の流失が10%加速しているとの研究結果が発表されました。さらに、2009年には北極の海氷が薄くなり、年間154万平方キロメートルの面積が減少したことが示されました。

2012年には、南極の棚氷54のうち20で、海流温度上昇による溶融が加速しているとの分析が発表され、ICESatによる450万回の計測データから得られた知見が広まりました。また、ICESatのデータを基に、地球全体の森林地図が作成され、他の衛星からのデータとも統合されて2010年7月に公表されました。

観測機器

ICESatは、地球科学レーザ高度計システムGLASを搭載しています。この装置は、リモートセンシング用に特別に設計されており、Nd:YAGレーザーを用いて赤外線と可視光の2種類の波長でレーザーパルスを発射します。発射されたレーザーは地表面に到達し、その反射と散乱光を収集することで高度を測定します。GLASの装置は約300キログラムの重さを持ち、毎秒40回のレーザー照射を行うことができます。

最後に

ICESatは、地球の温暖化に関する重要な観測を行い、未来の気候変動に関する研究に不可欠なデータを提供しました。途切れることなく気候変動の監視を続けるために、後継衛星であるICESat-2が計画されていますが、その打ち上げは2016年以降の見込みです。この間にNASAは「Operation IceBridge」として、ライダーを搭載した航空機による極地の観測を行っています。ICESatのデータは、温暖化の影響をリアルに把握するための大変貴重な資源となり、多くの研究者たちにとって基盤となっています。

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