IUE

国際紫外線天文衛星IUE（International Ultraviolet Explorer）

国際紫外線天文衛星（IUE）は、紫外線領域の電磁波を観測することを目的とした宇宙望遠鏡です。NASA（アメリカ航空宇宙局）、ESA（欧州宇宙機関）、イギリス科学研究評議会（SRC）の共同ミッションとして、1978年1月26日に打ち上げられ、当初の計画寿命を大幅に超える18年近く運用されました。その間、IUEは天文学に多大な貢献をし、数々の重要な発見をもたらしました。

プロジェクトの歴史

IUEの構想は、1964年前半にイギリスの科学者グループによって、ESAの前身である欧州宇宙研究機構（ESRO）に提案されました。しかし、当時のESROの技術力では実現が困難であったため、NASAに提案され、SAS-D（小型天文衛星-D）として計画が具体化しました。

その後、SRCが加わり、科学機器のソフトウェアやスペクトルグラフ用のビジコンカメラを提供。ESAは、マドリード近郊の欧州宇宙天文学センターの地上局と太陽電池パネルを提供しました。NASAは、衛星本体、望遠鏡、スペクトルグラフ、打ち上げ施設、そしてゴダード宇宙飛行センターの地上局を供給しました。

観測時間の配分は、各機関の貢献度に応じてNASAが3分の2、ESAとSRCがそれぞれ6分の1となりました。

IUEの革新性

IUEは、地上局からリアルタイムで紫外線スペクトルを観測できる初の科学衛星でした。1時間以内という迅速な応答時間により、観測対象の柔軟なスケジュール調整が可能となり、天文学者たちは、太陽系の天体から遥か遠方のクエーサーまで、10万回以上の観測を実施しました。

主な科学的成果

IUEによる観測データは、以下のような重要な科学的成果をもたらしました。

恒星風の研究: 恒星から放出されるガスの流れである恒星風の大規模な研究が行われました。
星間ダストの光吸収の計測: 星間空間に存在する塵（ダスト）が光を吸収する度合いを正確に測定しました。
超新星SN 1987Aの観測: 当時の恒星進化理論を覆す超新星SN 1987Aの観測が行われ、その後の天文学研究に大きな影響を与えました。
木星のオーロラの発見: 木星におけるオーロラの存在が初めて確認されました。
彗星の硫黄の検出: 彗星中に硫黄が存在することを初めて確認しました。
彗星の水損失の測定: 彗星が放出する水の量を定量的に測定しました。

これらの成果により、IUEは最も成功した天文衛星の一つとして認識されています。

運用終了

IUEは1996年まで運用されました。運用停止の理由は、衛星の故障ではなく、経済的な理由によるものでした。衛星自体は、当初の性能を維持したまま機能していました。

まとめ

IUEは、紫外線領域の天文学研究に革命をもたらした宇宙望遠鏡です。その観測データは、現在でも天文学研究において重要な資料として活用されています。IUEの成功は、国際協力によって科学研究が大きく進展することを証明する事例となりました。

参考資料

Exploring the Universe with the IUE Satellite ed. Y. Kondo 1987,1989 ISBN 90-277-2380-X
ESA Science and Technology: International Ultraviolet Explorer

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