IV号突撃砲

IV号突撃砲：緊急時に生まれた多目的戦闘車両

IV号突撃砲（Sturmgeschütz IV）は、第二次世界大戦中にドイツで開発された突撃砲です。制式番号はSd.Kfz.167で、日本では「四突」とも呼ばれています。この車両は、III号突撃砲の生産が滞った状況下で、迅速な戦力補充を目的として開発されました。

開発経緯

初期計画の頓挫

IV号突撃砲の最初の計画は、1943年2月にクルップ社によって立案された設計番号W1468に遡ります。この初期案では、IV号戦車の車体にIII号突撃砲F型の上部構造を組み合わせ、前面に傾斜装甲を施す予定でした。しかし、この設計では戦闘重量が28.26トンに達し、IV号戦車の車台では対応不可能と判断され、計画は中止されました。

IV号駆逐戦車との並行開発

1943年8月、クルスクの戦いの戦訓を踏まえ、ヒトラーは突撃砲が戦車よりも優れた戦闘力を持つと確信し、IV号戦車をベースとした駆逐戦車（Panzerjäger IV）の開発を命じました。同年10月にはフォーマーク社によって試作車が完成しましたが、これはパンター戦車の7.5cm L/70砲を搭載するものでした。しかし、長砲身の7.5cm L/70砲はパンターの主砲として優先的に使用されていたため、試作車にはIV号戦車と同じ7.5cm L/48砲が搭載されました。

当初、ヒトラーはIV号戦車の生産を駆逐戦車に切り替えることを計画し、名称もIV号駆逐戦車（Jagdpanzer IV）に変更しました。しかし、1943年11月にIII号突撃砲を生産していたアルケット社の工場が爆撃で被害を受け、生産がほぼ中断してしまったため、III号突撃砲の代替車両が急務となりました。

IV号突撃砲の開発

III号突撃砲の代替として、再びIV号戦車の車台を利用した突撃砲の生産が企画されました。1943年12月、ヒトラーはこの計画に同意し、当初の傾斜装甲案は放棄されました。代わりに、IV号戦車の車台にIII号突撃砲G型の上部構造を搭載する設計が採用されました。IV号戦車の車体はIII号戦車よりも長いため、操縦席は前方に突出しており、専用の乗降ハッチとペリスコープが追加されました。

IV号突撃砲はIII号突撃砲よりも大型に見えますが、重量は23,000kgと、III号突撃砲の23,900kgよりも軽量でした。IV号戦車の車台とIII号突撃砲の上部構造という既存部品の流用により、IV号駆逐戦車のように生産ラインの変更を必要とせず、迅速な生産が可能となりました。生産は、当時IV号戦車を生産していたクルップ社が担当することになりました。

1943年12月には早くも生産型が完成し、ヒトラーに謁見されました。その後、突撃砲の生産数を回復するために、IV号突撃砲の生産に集中することが決定されました。生産は1943年末からダイムラー・ベンツ社のマリーエンフェルデ工場で開始され、その後クルップ・グルゾンヴェルク社でも生産が行われ、1945年4月までに合計1,111輌が生産されました。

IV号突撃砲の登場によって、それまで単に突撃砲と呼ばれていたものはIII号突撃砲と呼ばれるようになりました。本車の乗員は4名で、III号突撃砲やIV号戦車の改良に合わせて、細部の異なるバリエーションが存在します。

戦闘能力と特徴

同時期のIV号駆逐戦車（Pak39/L48搭載型）と比較すると、IV号突撃砲は火力は同等ながら、防御力では劣っていました。しかし、主砲の搭載位置と前面装甲の面積の関係から、IV号駆逐戦車よりも重量バランスが良好で、機動性と操縦性で勝っていました。III号突撃砲の生産数には及ばなかったものの、ドイツにとって戦闘車両が最も必要だった1944年から終戦まで、III号突撃砲と共に戦い続けました。

部隊配備

IV号突撃砲の部隊配備は、1944年初め頃から開始されました。主にIII号突撃砲の補充用として、既存の突撃砲大隊、武装SSの突撃砲中隊、歩兵師団・猟兵師団・山岳師団内の戦車猟兵中隊、国民擲弾兵師団内の突撃砲大隊および戦車猟兵中隊に配備されました。一部はIV号戦車の代替として、戦車大隊に配備されることもありました。

まとめ

IV号突撃砲は、生産の遅れたIII号突撃砲の代わりとして、急遽開発された車両でした。既存の部品を流用しつつ、迅速な生産と実用的な戦闘能力を両立させた、ドイツ軍の戦況を支えた重要な車両の一つです。その活躍は、終戦まで戦い続けた事実が証明しています。

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