Il-40 (航空機)

イリューシン Il-40: 一時代を築いた試作攻撃機

イリューシン Il-40（NATOコードネーム：ブローニー）は、1950年代に並ぶ冷戦時代の産物として、設計や概念の面で国際的な注目を集めました。この機体は、ソビエト連邦によって開発されたジェットエンジンを搭載した試作地上攻撃機であり、特徴的なデザインにより新しい戦術的な役割を目指しました。

開発の背景

1952年1月、イリューシン社はソビエト政府に双発ジェットエンジンを搭載した地上攻撃機の提案を提出し、これを基に初期試作が進みました。この提案は、急速に変化する戦場のニーズに応えるためのものであり、空中からの攻撃力を強化する目的がありました。最初の試作機は、後退翼デザインにツマンスキーのRD-9エンジンを搭載した配置で、コックピットや重要な機器は装甲で保護されていました。

初飛行と性能

Il-40は1953年3月7日に初めて飛行しました。これまでのテスト飛行では、改善の余地はあったものの、主な問題として挙げられたのは滑走時の操縦性の悪さと、射撃時のエンジン停止です。特に、横滑りしながら発砲するとエンジンが停止する恐れがあり、これを解決するための試作2号機Il-40Pが開発されました。この機体は、エンジン空気取り入れ口を前方に延ばし、降着装置の wheelbaseも改良されました。

生産中止の決定

2機の試作機と5機のIl-40Pが生産されましたが、1950年代中頃にはソ連空軍が戦術核兵器を導入したため、攻撃機のコンセプトは時代遅れとされました。この判断によりIl-40の生産は中止され、既存の機体と生産設備は全て廃棄されることになりました。この決定は、当時の戦略状況を反映しています。

派生型と役割

Il-40シリーズは数つの派生型を持ち、それぞれ独自の役割を持ちました。例えば、Il-40は最初の試作機、Il-40Pは改良型、さらには観測機としてのIl-40Kや、雷撃機型のIl-40Tなどが存在しました。これらは異なる目的に応じて設計されたものであり、航空戦力の多様性を追求していました。特に、Il-42やIl-102といった次世代機も計画されましたが、これもまた別の競合機に敗れる運命にありました。

主要仕様

Il-40の主な仕様は以下の通りです。乗員は2名で、全長17.0m、全幅16.9m、翼面積は47.6㎡を誇ります。最大速度は964 km/h、巡航高度は11,600mと、高い性能を有しています。武装に関しては、胴体下に4門のNR-23機関砲が搭載され、後方にも2門の機関砲を備えていました。また、主翼には4つの爆弾槽と6つのハードポイントが配置されており、多様な兵装が可能でした。

結論

イリューシン Il-40は、冷戦時代の航空機開発史において重要な一歩を示す試作機でした。技術の進化に伴い新しい戦術が求められる中で、一時的な存在であったものの、航空機設計の可能性を広げ、後の航空機デザインに影響を与えました。

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