Illustra

Illustraとは

Illustraは、オブジェクト関係データベース管理システム（ORDBMS）であるPostgresの商用化バージョンとして、Illustra Information Technologies社によって開発・販売されました。この企業は、Postgresの開発者であるマイケル・ストーンブレーカーとポーラ・ホーソーンによって設立されました。Illustraは、従来のRDBMS（関係データベース管理システム）にオブジェクト指向の概念を取り入れ、データ管理の柔軟性と拡張性を高めることを目指しました。

Illustraの技術的特徴

Illustraの主要な特徴の一つが、DataBladeと呼ばれる拡張可能なモジュール群です。DataBladeは、ユーザーが独自のデータ型、演算子、関数などを定義し、データベースに組み込むことを可能にする画期的な技術でした。これにより、Illustraはウェブ出版、テキスト検索、地理空間情報管理、時系列データ処理、マルチメディアデータ処理など、多様な分野のニーズに対応できるようになりました。

DataBladeモジュールを有効に活用することで、プロジェクトにおけるプログラミングの効率が大幅に向上し、多くのプラットフォームへの移植も容易に行われました。

Illustraの買収と統合

1997年、Illustra Information Technologies社は、オブジェクト関係データベース（ORD）に注目していたInformix社によって買収されました。当時、Informix社はOracleやSybaseと並ぶ三大データベース企業の一つでした。

買収後、Illustraの技術はInformix社のRDBMS製品であるInformix 7 OnLineシリーズに導入され、さらにInformix Universal Server (IUS)という新しいORDBMS製品に統合されました。このIUSは後にInformix Dynamic Server (IDS)と名称変更されました。

2001年にはInformix社自体がIBMに買収され、Informixの製品は現在、IBMのDB2ブランドで開発と販売が継続されています。

Postgresの誕生と発展

Illustraの基となったPostgresは、マイケル・ストーンブレーカーがIngresの商業化を終えた後、カリフォルニア大学バークレー校（UCB）で新たに開始したプロジェクトです。プロジェクト名は、Ingresの後継を意味するPost-Ingresに由来しています。

Postgresの主な目標は、従来のRDBMSの限界を克服することでした。特に、ユーザーが新しいデータ型（ドメイン）を定義できないという問題を解決することに焦点が当てられました。Postgresは、型を完全にサポートするために必要な最小限の機能を導入し、データベースがリレーションを「理解」し、規則に従って情報を抽出できる能力を備えていました。

また、追記型メディアへの対応、大容量記憶装置への対応、推論機能、オブジェクト指向型データモデルなど、当時としては先進的な機能も取り入れられました。1986年から1993年にかけて、プロトタイプ版の公開、機能追加、再実装が行われましたが、1993年のバージョン4.2を最後にプロジェクトは終了しました。

Postgresのオープンソース化と現在

Postgresプロジェクトは終了しましたが、その技術はオープンソースコミュニティに受け継がれ、PostgreSQLとして開発が続けられています。PostgreSQLは、現在ではオープンソースのORDBMSとして広く利用され、多くのシステムで中核的なデータベースとして採用されています。一方、Illustraの技術は、IBM DB2の基盤技術として活用されています。

まとめ

Illustraは、Postgresという革新的なデータベース技術を商用化し、RDBMSの進化に大きく貢献しました。DataBladeによる拡張性の高さや、オブジェクト指向の概念を取り入れたことは、当時のデータベース技術に大きな影響を与えました。その技術は、Informixを経てIBM DB2に受け継がれ、現在でも重要な役割を果たしています。

Postgresもまた、オープンソースデータベースであるPostgreSQLとして進化を続け、広く利用されています。IllustraとPostgreSQLは、データベース技術の歴史において重要なマイルストーンであり、その影響は現代のデータベースシステムにも色濃く残っています。

外部リンク

"オブジェクトへと飛躍するInformix: Informix Universal Server はデータベースの技術水準を高めることを約束する" - ビル・ローゼンブラット
日本IBM Informix

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