ImageJ

ImageJとは

ImageJは、オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェアです。Java仮想マシン上で動作し、プラグインやマクロによる高い拡張性を誇ります。科学研究における画像解析ツールとして広く利用されており、特に生物学分野ではデファクトスタンダードとなっています。

特徴

再現性の高い画像処理

一般的な写真編集ソフトウェアとは異なり、ImageJは各種画像処理に用いられる数値計算のパラメータが明確に表示されるユーザーインターフェースを備えています。これにより、ピクセル値を基にした再現性の高い計算処理が可能です。

豊富なプラグインによる拡張性

ユーザーが作成したプラグインによって、さまざまな画像処理・解析の課題に対応できます。この拡張性の高さから、画像処理の教育現場でも広く利用されています。

オープンソース

ImageJはオープンソースであるため、処理過程を全て確認できます。計算過程にブラックボックスがないため、科学研究での使用に適しています。ソースコードはGitHubで公開されています。

動作環境

Windows版とLinux版にはJava 1.8のVMが組み込まれており、Java実行環境がなくても動作します。Mac OS X版では、OSのバージョンに応じて異なるバージョンをダウンロードする必要があります。Platform Independent版は、Java実行環境が既に存在するデバイス向けのバージョンです。

ImageJは、ダウンロードアプリケーションとしてだけでなく、Javaアプレットとしても動作します。

開発の歴史

ImageJは、アメリカ国立衛生研究所 (NIH) のWayne Rasband氏によって開発が開始され、1997年に最初のバージョンがリリースされました。ImageJの思想的なルーツは、Rasband氏が開発したNIH Imageにあります。NIH Imageは1987年にリリースされ、電気泳動ゲルのバンドを定量化することを目的としていました。

NIH ImageはMac OSのみで動作するという制約がありましたが、Java言語の登場をきっかけに、Java仮想マシン上で動作するImageJの開発が始まりました。メニュー構成はNIH Imageを継承し、科学研究に適した機能も引き継がれています。Wayne Rasband氏はNIH退職後も開発を続け、新たな機能を追加し続けています。

基本機能

ImageJは、1/8/16ビット整数グレースケール、32ビット浮動小数グレースケール、24ビットRGB/32ビットRGBAカラー画像を編集、解析、処理、保存、印刷できます。処理可能な画像数は、物理メモリとOSのアプリケーションメモリ空間の制限に依存します。

対応画像フォーマット

TIFF、PNG、GIF、JPEG、BMP、DICOM、AVIなど、様々な画像フォーマットに対応しています。また、顕微鏡メーカーやカメラメーカーの特殊な画像フォーマットにも対応しています。

スタック画像

3次元のスタック画像 (multi-tif画像) に対応しており、マルチスレッド処理により複数の処理を並行して行うことができます。特にスタック画像では、マルチコアCPUによる並列処理が効果的です。

ROI (Region of Interest)

マウスによるROI (Region of Interest) の設定が可能で、ROIの面積、ピクセル値の統計値、形態パラメータを測定できます。

その他の機能

電気泳動ゲル写真のバンド濃度測定
ピクセル値による閾値設定と選択範囲指定
距離や角度の測定
ピクセル値のヒストグラム表示
直線上のピクセル値輝度分布の測定とプロット
画像間の論理演算
コントラスト強調
畳み込み
フーリエ解析
シャープネス、スムーズ処理、エッジ検出、メディアンフィルタ
スケール設定、回転、反転

拡張性

Javaプラグインや記録可能なマクロによって機能を拡張できます。ImageJ内蔵のJavaコンパイラを用いて、撮影、解析、画像処理などの追加機能を自作し、プラグインとして導入できます。世界中の研究者が独自のプラグインを開発し、ImageJホームページで公開しています。

ディストリビューション

Fiji (Fiji Is Just ImageJ) は、様々なプラグインを同梱したパッケージとして配布されています。Fijiには豊富な3次元画像解析機能、プラグインの自動アップデート機能、スクリプティング機能が搭載されています。Fijiの開発チームはImageJ2の開発チームと融合し、事実上ImageJ2の配布プラットフォームとなっています。

論文への引用

ImageJを使って解析した結果を論文に掲載する際は、以下の引用を行うことが推奨されています。

Rasband, W.S., ImageJ, U. S. National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA, http://imagej.nih.gov/ij/, 1997-2012.
* Schneider, C.A., Rasband, W.S., Eliceiri, K.W. "NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysis". Nature Methods 9, 671-675, 2012.

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