Io uring

io_uring: Linuxカーネルの非同期IOインターフェース

概要

io_uring（旧称aioring）は、Linuxカーネルにおける非同期入出力（IO）操作のための新しいシステムコールインターフェースです。この技術は、従来の入出力操作で見られたパフォーマンスの問題を解決することを目的とされています。従来のAPIでは、ファイル記述子を経由したデータ処理に関して（たとえば、`read()`や`write()`、`aio_read()`や`aio_write()`等）、多くの課題が存在しましたが、io_uringはそれを改善することを目指しています。主にMetaのジェンス・アクスボーが開発を進めています。

インターフェースの構造

io_uringは、I/Oリクエストの提出と完了を管理するために、2つのリングバッファ、通称「キュー」を利用します。これらは「提出キュー（SQ）」と「完了キュー（CQ）」と呼ばれ、それぞれI/Oリクエストの管理を行ないます。このキューの設計において、カーネルとアプリケーション間でバッファを共有することが可能になるため、不要なバッファのコピーを避けることができ、システムコールの発行を減少させることができます。特に、SQはアプリケーション専用で書き込みが可能で、CQはカーネル専用とすることで、効率的なデータ処理が行えるのです。

歴史

Linuxカーネルにおける非同期IOは、バージョン2.5以降から存在していましたが、古いAPIは使いづらく非効率的でした。そのため、特定のニッチなユースケースにのみ適したものでした。2019年には、Linuxカーネルバージョン5.1で新たにio_uringが実装され、同時にユーザースペースからカーネルインターフェースにアクセスするための`liburing`ライブラリも提供されました。これにより、使いやすさが大幅に向上し、2020年代以降にはio_uringを利用するさまざまなソフトウェアが登場しました。具体的には、Intel Cloud-Hypervisor 0.9、Limbo（SQLite互換実装）、および将来的なPostgreSQL 18などがあります。

io_uringを用いたライブラリ

• - Seastar: C++で開発されており、スレッド毎にコアを使うサーバーアプリケーション向けのフレームワークです。Linux-aio、epoll、io_uringなど複数のバックエンドを持っています。ScyllaDBでも利用されています。
• - glommio: Rustによるスレッド毎のコアプログラミングをサポートするライブラリで、Seastarから影響を受けて開発されました。特に、3つのリングを作成する機能があり、低レイテンシでのNVMe IOのポーリングが可能です。
• - Storage Performance Development Kit: Intelが開発し、オープンソース化されたキットで、NVMe SSD向けの開発が行えます。独自のNVMeブロックデバイスはio_uringよりも高速ですが、io_uringをブロックデバイスとして利用することもできます。

まとめ

io_uringは、ストレージデバイスの非同期I/O処理に新たな可能性を開くシステムコールインターフェースです。その効率的なデータ管理やリクエスト処理により、特に高いパフォーマンスが求められる現代のアプリケーションにおいて、重要な役割を果たすことが期待されています。

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