JBA下谷賞

JBA下谷賞（ジェイビーエーしたやしょう）

日本の吹奏楽界の発展に寄与することを目指し、優れた吹奏楽作品を創出するとともに、新たな作曲家の育成を奨励するために設けられた作曲賞です。この賞は、一般社団法人日本吹奏楽指導者協会（JBA）によって運営されています。

歴史的変遷

JBA下谷賞の歴史は、1968年に「JBA作曲賞」としてスタートしました。当初はJBAが独自に作品を公募し、吹奏楽のオリジナル作品の普及を図る役割を担っていました。大きな転換期を迎えたのは1975年です。株式会社千修の歴代社長である下谷修久氏、そして下谷隆之氏が本賞のスポンサーとなったことを機に、その名称を「下谷賞」へと改めました。これにより、賞の運営基盤が強化され、より安定的な活動が可能となりました。

しかし、2007年からは選考方法に変化が見られました。JBA自身による作品公募は一時停止され、代わりに「21世紀の吹奏楽実行委員会」が主催する演奏会シリーズ「響宴」で取り上げられ演奏された作品の中から、特に優れたものに対して「下谷奨励賞」が贈られる形式となりました。この下谷奨励賞は、2016年に再びその名称を「JBA下谷賞」と改め、響宴で発表される新作に光を当てる役割を果たしました。

予期せぬ中断もありました。2020年から2022年にかけて、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、「響宴」の開催が見送られました。これに伴い、JBA下谷賞の選考も一時的に行われない期間が生じました。この状況を経て、2022年からはJBAが再び主導する形で、独自の作品募集と選考プロセスを再開し、現在に至っています。

過去の募集・選考形式

賞の初期においては、募集する作品の形式が細かく定められていました。例えば、1972年に募集された形式は以下の3つの部門に分かれていました。

第1部: 行進曲形式の作品。
第2部: 自由な形式でありながらも、斬新さと演奏の平易さを兼ね備えた作品。
第3部: 芸術性を重視し、高度な内容を持つ自由形式の作品。

また、1973年と1974年には、形式が以下のように変更されました。

第1部: 独創的で豊かな内容を持ち、形式は自由。日本の多くのアマチュア吹奏楽団が演奏するのに適した楽曲で、行進曲の形式も許容されました。
* 第2部: 芸術的な完成度が高く、形式は自由。比較的高度な演奏技術を持つ団体による演奏を想定した作品も対象となりました。

これらの形式は、当時の吹奏楽界の状況やニーズに応じたものであり、幅広いジャンルの作品開発を奨励する意図があったと考えられます。近年は、特定の形式に限定せず、自由な発想に基づく作品が求められる傾向にあります。

意義と関連事項

JBA下谷賞は、その長きにわたる歴史の中で、数多くの優れた吹奏楽作品と作曲家を世に送り出してきました。本賞を通じて生み出された楽曲は、全国各地の吹奏楽団によって演奏され、日本の吹奏楽文化の普及・向上に大きく貢献しています。

関連する団体や作曲賞としては、本賞を主催する日本吹奏楽指導者協会のほか、「21世紀の吹奏楽“響宴”」があります。また、吹奏楽分野における主要な作曲賞には、朝日作曲賞 (吹奏楽)、日本管打・吹奏楽学会作曲賞などがあり、それぞれが日本の吹奏楽作品の振興に独自の役割を果たしています。福島市が主催する古関裕而作曲コンクールなども、新たな吹奏楽作品の創出を促す取り組みとして挙げられます。

これらの活動全体が、日本の吹奏楽の多様性と芸術性を高める力となっています。

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