JDM (自動車)

JDM（Japanese Domestic Market）とは

JDM、すなわちJapanese Domestic Marketとは、日本国内市場を指す言葉です。特に、日本国内向けに設計・仕様変更された自動車や、日本国内で流通する自動車関連製品を指すことが多く、これらの製品を用いたカスタム手法としても広く知られています。

定義・概要

広義には、日本国内専売の自動車や純正部品、日本製アフターマーケットパーツを用いたカスタム手法全般を指します。狭義には、アメリカなどの海外市場で流通している日本車を、現地の日本メーカーまたはそれに準ずるメーカーの部品を使って改造すること、あるいは日本純正部品を用いて日本仕様に近づける改造を指します。

JDMは日本国内だけでなく、イギリスやオーストラリアなど右ハンドル車が主流の国々でも人気があります。これらの国では、日本からの部品を比較的容易に入手できるため、JDMカスタムが盛んに行われています。また、日本から中古車が輸出されることもあり、それらの車両をJDMと呼ぶこともあります。

狭義のJDMカスタムのベースとなる車種は、スポーツカーやコンパクトカーが中心です。現地の「JDM」は日本の「USDM」と似た意味合いで使われることも多く、USDMを施した車に北米向けの日本製品を装着することもJDMと呼ばれることがあります。このジャンルはアメリカが発祥ですが、日本に逆輸入される形で定着しました。

元来、JDMは車種や部品を限定したものではありませんが、その成立過程からUSDMやスポーツコンパクトの範疇に含まれることがあります。

1990年代前半までは、日本からの部品輸入が困難だったため、コピー品が出回ることもありました。しかし、1990年代後半になると、日本の著名なアフターマーケットメーカーが北米に進出し、現地生産された部品を用いたカスタムもJDMに含まれるようになりました。

現在では、走りに特化したカスタムを施し、アンバーターンランプやカーボン製パーツ、リップスポイラーなどを装着した車両全般がJDMと呼ばれることもあります。また、ドリフト走行の影響から、ドリフト向けカスタムを施した車もJDMと見なされることがあります。

総じて、JDMカスタムは1990年代の日本の「走り屋」スタイルをモチーフに、走行性能の向上に重点を置いたカスタムです。そのため、日本では純正状態や走り屋、暴走族スタイルはJDMとは見なされません。

JDMは欧米を中心にブームとなっており、1990年代のスポーツカーが海外に流出しています。特に、A80型スープラやスカイラインGT-Rは高値で取引され、日本国内での盗難や中古価格の高騰を招いています。しかし、一部地域では規制によりJDMブームが廃れつつあります。

ジャンルとしての生い立ち

起源

1980年代、アメリカでは安価で壊れにくい日本車が若者に人気となりました。自動車雑誌も日本車に注目し、チューンナップ雑誌も日本車中心の内容にシフトしていきました。日本車は改造車のベースとして広く受け入れられ、若者以外にも浸透しました。

1990年代に入ると、日本の「走り屋」スタイルがアメリカに伝わり、走行性能を追求するカスタムが生まれました。しかし、日本と北米では自動車の法規が異なるため、エンジンや排気系などに違いがありました。日本仕様の高性能エンジンは羨望の的となり、アフターマーケットパーツも日本製品が求められるようになりました。

一部の熱心な愛好家が日本からエンジンや部品を調達し、日本の走り屋スタイルを自分たちの車に施しました。これがJDMカスタムの始まりです。2000年代には、日本のアフターマーケットメーカーの北米進出により、部品の入手が容易になりました。

日本への導入

JDMが日本にジャンルとして確立したのは、1990年代中期にスポーツコンパクトが普及し始めてからです。当時は日本にこのジャンルの雑誌がなかったため、現地の雑誌を参考にするしかありませんでした。そこでは、現地の部品や誤ったエンブレム装着など、斬新なカスタム手法が紹介され、日本の愛好家たちはそれを参考にしました。

しかし、メディアによって「JDM」という言葉だけが先行し、その成り立ちを無視したカスタムがJDMとして紹介されることもありました。そのため、本来の意味合いが薄れ、ある意味で陳腐化しているとも言えます。

主な改造方法

JDMカスタムは、USDMの考え方を下地に、日本製製品を追加する形で行われることが多いです。北米仕様の純正状態を意識し、その上で日本製のパーツを取り付けます。イギリスやオーストラリアでは、エンジンやサスペンションなどの機能部品を日本仕様の純正品やアフターマーケット品に交換することが多いです。

以下は、代表的な改造点の一例です。

チューンナップパーツは、日本の著名メーカーの現地法人製品や、GTレースなどで活躍するメーカーの製品を使用。
日本の高性能ホイールを模したコピー品も使用。
ホイールサイズは14〜16インチが主流だが、大径ホイールも使用される。
外装はUSDMを下地にする。
日本国内仕様のバッジ類を装着（例：レクサスIS200をトヨタアルテッツァ仕様に変更）。
ウインカーはオレンジ（アンバー）を使用。
灯火類の点灯方法は北米と同様に行う。
カーボン製パーツを装着。
旧車にはドアミラーを取り外し、フェンダーミラーを装着。
日本仕様のフェイス周りに換装（例：240SXをシルビア仕様に変更）。
車庫証明ステッカー、初心者マーク、JAFエンブレムなどを装着。
日本製エアロパーツも使用されるが、リップスポイラーの方が装着率が高い。

2010年には、VIPカーの「ツライチ」を参考にした「ヘラフラッシュ」が流行し、日本では「スタンス」というスタイルも生まれました。

まとめ

JDMは、日本国内市場向けの自動車や部品、そしてそれを用いたカスタム手法を指す言葉です。その起源はアメリカの日本車カスタムシーンにあり、1990年代の日本の走り屋スタイルが大きな影響を与えました。現在では、JDMは世界中で人気のあるカスタムジャンルとして定着し、多くの愛好家たちがその魅力を追求しています。

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