JR東海キハ85系気動車

キハ85系気動車

キハ85系気動車は、かつて東海旅客鉄道（JR東海）が保有していた特急形の気動車です。この車両は、老朽化が進んでいたキハ80系気動車を置き換え、運行時の所要時間を短縮する目的で開発されました。1989年の2月18日から高山本線の特急「ひだ」で営業運転を開始し、1992年からは紀勢本線の特急「南紀」にも使用されました。車両のデザインは剣持デザイン研究所が手がけており、1989年には日本産業デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞しています。特に、このシリーズの設計理念は以降のJR東海の在来線用車両にも影響を与えました。

構造

車体

キハ85系の車体は、軽量化とメンテナンスフリーを追求してステンレス鋼の軽量構体が採用されました。外観は、側窓の上下にダークグレー色が使用され、側窓下部にはJR東海のコーポレートカラーであるオレンジと白の帯が施されています。先頭部では、不幸にして事故が発生した際の復旧が難しいため、普通鋼が用いられており、腐食を防ぐために白色で塗装されています。

キハ85系は、観光路線である高山本線や紀勢本線への使用を前提とし、眺望の確保にも重点が置かれています。非貫通型の先頭車は流線形のデザインになっており、大型のフロントガラスとサンルーフが特徴です。対する貫通型の先頭車は、側面に回り込む大きなパノラミックウィンドウが設置されています。これらのデザイン要素は、地域の特産物からインスパイアを受けた形状に基づいており、実際にデザイン決定に寄与しています。

車内

キハ85系は、通路と座席の間に高低差を設けることで、側窓からの見晴らしを向上させています。座席の前後間隔は、キハ80系と比べて拡大され、快適な乗車空間を提供しています。冷房装置は、従来の気動車とは異なり、編成中の特定車両ではなく、動力源と直接連結された駆動機関から供給されるため、柔軟な編成が可能です。また、グリーン車には半室と全室の2つのタイプが存在します。

機器類

キハ85系の特筆すべき点は、日本製の旅客車両として数十年ぶりに輸入ディーゼルエンジンが搭載されたことです。アメリカのカミンズ社製の直列6気筒エンジンが使用され、120kmでの走行能力を誇る小型高出力のエンジンを搭載しています。これにより、特急列車としての必要な加速性能を確保しています。

運用

1989年から「ひだ」で運用を開始したキハ85系は、1990年にはすべての「ひだ」に投入されました。また、「南紀」でも運用が開始され、特に南紀方面では多くの季節運行も行われてきました。過去にはホームライナーにも使用されていましたが、近年はその数が減少しています。2022年にはHC85系に置き換えられることが決定しましたが、運用終了後も臨時列車としての需要に応じた運行が行われました。

京都丹後鉄道KTR8500形

WILLER TRAINSによる特急車両の老朽化を受け、キハ85系の一部が京都丹後鉄道に譲渡され、KTR8500形の名で運用が開始される予定です。その詳細については、今後の運行計画によりますが、2024年度からの運行が期待されています。

事故

1996年には高山本線で落石事故が発生し、1両が廃車となりましたが、その後も安定した運用が続きました。これに関しても見直しがなされています。

キハ85系はそのデザインと性能から、今なお多くのファンに愛され続けています。

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