カミンズ

カミンズ（Cummins Inc.）

カミンズは、ディーゼルエンジン、代替燃料エンジン、発電機などの動力源、各種コンポーネントの製造・販売・アフターサービスを行うアメリカ合衆国のエンジンメーカーです。1919年に創業し、本社をインディアナ州コロンバスに構えています。

概要

2019年の時点で、カミンズは190以上の国と地域に600以上の販売会社・代理店、7,200店以上のディーラー、約61,000人の従業員を擁する国際的な企業です。ニューヨーク証券取引所に上場しており、2019年12月期の売上高は約236億USドル、純利益は約23億USドルに達しています。売上高の約43%はアメリカ国外によるもので、グローバルな事業展開をしています。

エンジン事業においては、排気量2.8 - 95.0Lのディーゼルおよび天然ガスエンジンのサプライヤーとして、国際的に大きなシェアを誇ります。特に北アメリカの大型トラック市場では、約38%の市場占有率を持っています（2017年時点）。

カミンズは、エンジン本体だけでなく、発電機や各種コンポーネント事業も展開しています。プレジャーボート用発電セットは「Onan」、ターボチャージャーは「Holset」、エアクリーナーなどのフィルター類は「Fleetguard」というブランド名で展開しています。

拠点

カミンズは、世界各地に製造拠点や販売拠点を置いています。

海外拠点・現地法人

欧州：イギリス ノーサンプトンシャー州
アジア：シンガポール、韓国 ソウル、中国 北京
南米：ブラジル サンパウロ
南太平洋地区：オーストラリア ビクトリア州

主要生産拠点

アメリカ合衆国：インディアナ州コロンバス、インディアナ州シーモア、ノースカロライナ州ロッキーマウント、ニューヨーク州ジェームズタウン
イギリス：イングランド ダーリントン、イングランド ダベントリー
ブラジル：サンパウロ
メキシコ：サン・ルイス・ポトシ
インド：プネー、ジャムシェードプル（タタ・カミンズとの合弁）
中国：襄陽市（東風カミンズエンジン）、北京市（北京福田カミンズエンジン）、重慶市（重慶カミンズエンジン）、西安市（西安カミンズエンジン）
日本：栃木県小山市（コマツカミンズエンジン株式会社との合弁）
ロシア：ナーベレジヌイェ・チェルヌイ（カミンズ・カマとの合弁）
トルコ：イズミル（BMC Sanayi ve Ticaret A.Ş.によるライセンス生産）

※合弁会社による生産も多いのが特徴です。

略歴

1919年、クレシー・ライル・カミンズによってカミンズ・エンジン社が設立されました。カミンズは、銀行家で投資家でもあったウィリアム・グラントン・アーウィンの自家用車運転手を務めていた時期があり、ディーゼルエンジンの開発に強い関心を持っていました。アーウィンの支援を受け、エンジン開発事業をスタートしました。

当初はオランダのHvid社のライセンスを受けて農業用エンジンを生産し、シアーズ・ローバックでも販売されました。その後、高速エンジンの大型化を進めましたが、1924年には船舶用エンジンの開発に失敗し、倒産の危機に瀕しました。しかし、技術者のヌードセンの協力を得て、直噴式高速ディーゼルエンジンの開発に成功し、事業を継続しました。

1929年には、自社製ディーゼルエンジンを搭載した試作車が、ニューヨークの自動車ショーで注目を集めました。経済性の高さが評価され、自動車用エンジンメーカーとしても販路を広げ、経営が軌道に乗りました。第二次世界大戦中は、連合国軍に軍用エンジンとして採用されました。

1950年代には、アメリカの州間高速道路網の拡充に伴い、業績を大きく伸ばしました。耐久性と信頼性の高さから、多くの大型トラックメーカーに採用され、売上高は1億USドルに達しました。また、インディ500にも参戦し、1952年にはターボディーゼルエンジンを搭載したマシンでポールポジションを獲得しました。

1950年代以降は、海外進出を積極的に行い、自社工場と合弁会社の生産拠点を世界各地に設置し、98か国2,500箇所にサービス拠点を構えるまでに成長しました。

コンポーネントや発電機事業も企業買収を通じて強化し、1973年にターボチャージャー製造メーカーのHolset Engineering Co.を買収、1992年に発電機メーカーのOnan Corporationを買収、1999年には排気ガス後処理装置メーカーのNelson Industries Inc.を買収しています。

2019年には、カナダの水素燃料電池プロバイダーであるHydrogenics Corporationの株式80%を取得し、水素燃料電池の開発にも取り組んでいます。

エンジンラインアップ

汎用タイプ

カミンズの汎用ディーゼルエンジンは、オンロード用とノンロード用に大別されます。オンロード用は「IS」+数字、ノンロード用は「QS」+数字で型式が分けられていましたが、2017年以降の排出ガス規制適合エンジンから統一されました。旧世代のエンジンは、排気量を立方インチで表し、ターボやアフタークーラーの有無を示す記号が型式に含まれています。

汎用エンジンは、オンロード/ノンロード用途ともに赤く塗装されているのが特徴です。ただし、一部の船舶用エンジンは白く塗装されています。動弁機構はOHVが多く、固定容量のウェイストゲート型ターボが採用されています。

最新世代のエンジンは、排出ガス後処理装置にDOC、DPF、尿素タンク、SCRを一体化した「Single Module」を採用し、省スペース化を図っています。また、ディーゼルエンジンをベースとした天然ガスエンジンもラインナップされています。

主要なノンロードエンジン

QSF2.8：2.8L 直列4気筒
QSF3.8：3.8L 直列4気筒
QSB4.5：4.5L 直列4気筒
QSB6.7：6.7L 直列6気筒
QSL9：8.9L 直列6気筒
QSX15：15L 直列6気筒
QSK19：19L 直列6気筒
QSK23：23L V型12気筒
QSK38：38L V型12気筒
QSK50：50L V型16気筒
QSK60：60L V型16気筒
QST30：30L 直列6気筒（特殊用途向け）

このほか、排出ガス規制適用除外分野や開発途上国向けに旧式エンジンも生産されています。

ピックアップトラック用

2021年現在、ラム・トラックスのラム（1500を除く車種）向けにエンジンを供給しています。ラムには、1989年からカミンズ製直列6気筒ディーゼルエンジンが搭載されており、2019年には市販のピックアップトラック用エンジンとして初めて最大トルク1,000 lb-ft（1,356 N・m）を達成しました。

ピックアップトラック用エンジンは、ブロックが黒く塗装されています。

6.7L 直列6気筒ディーゼルターボエンジン

2016年から2019年まで、日産のタイタンにも“Cummins 5.0L V8 Turbo Diesel”が供給されていました。

日本での事業展開

カミンズジャパン株式会社は、1961年に小松製作所との合弁会社として設立されました。その後、カミンズの完全子会社となり、コマツとのライセンス契約も終了しましたが、1993年に再び合弁会社コマツカミンズエンジンを設立し、現在に至っています。

カミンズは、日本進出当初からコマツと密接な関係を築いており、共同でエンジン開発を行っています。また、いすゞ自動車ともパワートレイン事業に関する包括的パートナーシップ契約を締結しています。

自動車

2021年、いすゞ自動車は北米で販売する中型トラック向けにカミンズ製エンジンを調達することを発表しました。また、日本国内で生産する車両向けにもカミンズ製エンジンを搭載する計画です。

2024年7月には、いすゞとUDトラックスの中型トラックに、いすゞとの共同開発による直列6気筒エンジン「DB6A」を搭載したモデルが追加されました。

日野自動車も、北米で生産するトラックにカミンズ製エンジンの供給を受けることで合意しています。

日本国内では、従来、自動車メーカーが自社系列のエンジンを搭載するのが一般的でしたが、カミンズのような独立系メーカーのエンジンが採用されるケースが増えています。

特殊自動車

建設機械などの特殊自動車には、カミンズ製ディーゼルエンジンの採用が多く見られます。日立建機、住友重機械建機クレーン、コベルコ建機など、多くのメーカーがカミンズ製エンジンを採用しています。

船舶

カミンズは、プレジャーボートや商船向けに、国際海事機関の排出ガス規制に適合したディーゼルエンジンを供給しています。船舶向け排出ガス規制は、他分野ほど厳しくないため、やや古い型式のエンジンも採用されています。

鉄道車両

1950年代から、海外輸出用の鉄道車両にはカミンズ製エンジンが搭載されていましたが、日本国内向けとしての導入は遅れました。しかし、1989年にJR東海のキハ85系気動車にカミンズ製エンジンが採用されたことで、日本国内でも広く知られるようになりました。

現在では、JR東海やJR東日本などの鉄道会社で、カミンズ製エンジンが採用されています。

脚注

関連項目

圧縮開放ブレーキ：創業者Clessieが考案、Jacobs Vehicle Systemが商品化。
スカニア：共同でCummins-Scania XPI Manufacturing社を設立し、コモンレールシステム「XPI」を製造。
ティモシー・コリンズ：元社員。

外部リンク

公式ウェブサイト
Cummins Japan (@CumminsJapan) - X（旧Twitter）
Cummins Inc. (@cummins) - Instagram
* Cummins - YouTubeチャンネル

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