JR貨物コキ70形貨車

JR貨物コキ70形貨車

JR貨物コキ70形貨車は、日本貨物鉄道（JR貨物）が1991年に開発した多目的輸送用貨車です。従来のコンテナ車では輸送が難しかった背高コンテナや、トラックのピギーバック輸送に対応するため、低床構造を採用したのが特徴です。

開発の背景

国鉄時代には途絶えていた海上コンテナの鉄道輸送が、JR貨物発足後に再開されました。当初は一時的なものでしたが、モーダルシフト推進政策やトラック輸送の人手不足から、本格的な輸出入貨物の鉄道輸送の需要が高まりました。しかし、従来のコキ100系では背高コンテナの積載が難しかったため、新たなコンテナ車の開発が求められました。

車両の構造

コキ70形は、背高コンテナ積載に対応するため、床面高さを709mmまで下げた低床構造を採用しています。これにより、大型トラックのピギーバック輸送も可能になりました。車体長は19,800mmで、外観はファーストブルーで塗装されています。

床面にはトラック積載用の走路が設けられ、ユニット両端の端梁は開閉式です。コンテナ緊締装置は着脱式で、様々な種類のコンテナやトラックに対応できます。積載能力は、JR20ftコンテナ3個、JR30ft・ISO規格20ft(20.3t)2個、ISO規格20ft(24.0t)・40ft・45ftが各1個です。トラックは11t車1台、4t車2台、20kLタンクローリー1台を積載できます。

台車は、車輪径を610mmに小型化したFT11形を使用しています。軸箱装置はシェブロンゴム支持で、低床構造における減衰性能を確保するためボルスタレス式空気ばね台車が採用されました。基礎ブレーキ装置には、JR貨物で初めてディスクブレーキと滑走防止装置が搭載されました。

ブレーキ装置はCLE方式（応荷重式電磁自動空気ブレーキ）を採用し、電磁弁は奇数車に装備されています。2両を1ユニットとして運用するため、中間の連結器は高さを550mmに下げた固定連結器となっています。

運用とその後

試作車2両が1992年から営業運転に使用されましたが、量産には至りませんでした。これは、景気後退によるピギーバック輸送の需要減少や、その後の建築限界調査で、背高コンテナ輸送に低床車両が必ずしも必要ではないことが判明したためです。

現在、コキ70形は使用を休止しており、川崎車両所内に留置されています。その役割は、コキ106形やコキ200形といった後継のコンテナ車に引き継がれています。

設計思想の継承

コキ70形の「低床式多目的車両」という設計思想は、後のコキ71形「カーラックシステム」などに継承され、鉄道貨物輸送の多様化に貢献しました。

参考文献

電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2000年1月号 No.680 特集：貨物輸送
交友社『鉄道ファン』2002年7月号 No.495 特集：コンテナ特急
鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2005年5月号 No.463 特集：鉄道貨物輸送の現状
ネコ・パブリッシング『車を運ぶ貨車（下）』 RM LIBRARY No.84 2006年
『日本の貨車-技術発達史-』（貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年）

関連項目

JR貨物の車両形式

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