JUST ONE MORE KISS

BUCK-TICKの「JUST ONE MORE KISS」（ジャスト・ワン・モア・キス）は、バンドの初シングルとして1988年 10月26日にビクター音楽産業のInvitationレーベルからリリースされました。この楽曲は、メンバーである桜井敦司が作詞を、今井寿が作曲を担当し、バンド自身によるセルフ・プロデュースで制作されました。

このシングルは、メジャーデビューから2年目にあたる中での発表であり、既に3枚のアルバムをリリースしていたBUCK-TICKにとっても特に重要な楽曲です。引き続き、当時制作中だった4枚目のアルバム『TABOO』の先行シングルとしての位置付けを持っており、バンドとして初のヒット曲となる運命を背負っていました。本楽曲はオリコンチャートで最高位6位に達し、また第30回日本レコード大賞では新人賞を受賞しました。

制作と録音

シングル制作は、BUCK-TICKにとって今作が初めてであり、今井寿は「特にシングルという意識はなかった」と語っています。制作にあたり、「BUCK-TICKらしさ」を追求し、メロディに関しても商業的成功やキャッチーさは意識せずに創作したという信念がありました。メンバーのヤガミトールは、「バンドの特色を失わずに、自然体での楽曲制作が大切だ」とし、商業主義に流される必要はないと強調していました。今井は「バンドっぽさを大切にしたい」という点に注力し、曲をたった3日間で仕上げたとされています。

作詞に関して、桜井敦司は当初「甘く切ない世界」をテーマに書き始めましたが、書いた歌詞に満足できず、新たに歌詞を練り直しました。桜井は、メロディに合わせて歌ってみた時に曲の奥行きに気付き、完成したものに感動したと明かしています。この経験が、彼にとって特別な意味を持つものとなりました。

音楽性と歌詞の内容

この楽曲は、ラブソングとしての側面を持ちながらも、桜井は恥じらいをもって「退廃的なラブソング」と表現しています。彼はキャッチーさを意識し、耳に残るフレーズを取り入れることに力を入れました。特に「トキメキは帰らない」というフレーズは、長い関係の中で忘れ去られてしまう初期の感情を表現したものです。

タイトルについても、今井が制作したフレーズを元に桜井が発想し、楽曲の印象を決定づけています。その後、『TABOO』のアルバムで最終曲として収録される経緯となりましたが、桜井はこれを「素晴らしい曲」と評価し、1988年のBUCK-TICKの成長を象徴する曲と位置付けました。

リリースとプロモーション

1988年 10月26日、リリースされた本作は7インチレコード、8センチCD、カセットテープの3形態で販売されました。カップリングには「TO SEARCH」という曲が収録されており、これはインディーズ時代に発表された曲を再レコーディングしたものです。リリースに際し、BUCK-TICKは1988年 11月4日に音楽番組『ミュージックステーション』に初出演し、本作を生演奏しました。

メディアでの使用と影響

「JUST ONE MORE KISS」は、日本ビクターのCDラジオカセットレコーダー「CDian」のコマーシャルソングとしても使用され、メンバー自身もCMに出演しました。このCMは大きな話題となり、「重低音がバクチクする」というキャッチコピーは多くのファンの心に残りました。また、楽曲のミュージックビデオも制作され、撮影中のメンバーは多忙の日々の中で創り上げられました。

チャート成績と受賞

本作はオリコンチャートで最高6位の成績を収め、累計売上は14.7万枚を記録しました。また、このヒットによりBUCK-TICKは第30回日本レコード大賞にて新人賞を受賞、これが彼らのさらなる飛躍につながりました。

別バージョンとカバー

BUCK-TICKは自身のセルフカバー・アルバムにおいて本作のリアレンジバージョンを収録しました。また、他のアーティストによるカバーも多数存在し、時代を超えて愛され続ける名曲となっています。多くのアーティストが『PARADE』シリーズを通じて本作を取り上げ、その影響力を示しています。

「JUST ONE MORE KISS」は、BUCK-TICKの音楽性を象徴する楽曲として、今でも多くのファンに支持され続けていることがその証です。

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