KM-2

KM-2練習機：海上自衛隊パイロットの育成を支えた名機



KM-2は、海上自衛隊が運用していた初等練習機です。パイロット養成の初期段階で、操縦技術の基礎を培うために使用されました。この機体は、富士重工業（現SUBARU）によって製造され、その開発には興味深い背景があります。

開発経緯：民間機から練習機へ



富士重工業は、当時高性能な双発機への需要が高まっていた民間航空市場に対応するため、LM-1の改良に着手しました。その結果、LM-1のエンジンを強化し、プロペラを換装した試作機XKMが誕生しました。1958年12月1日に初飛行したXKMは、高度9,917mのFAI公認記録を達成し、その高い性能を証明しました。この試作機を基に、量産型のKMが開発され、まずは運輸省の航空大学校に練習機として納入されました。

自衛隊での採用：海上自衛隊のニーズに応える



当初、KMは陸上自衛隊での採用を目指していましたが、LM-1のエンジンとプロペラを換装しただけの機体では、陸自の要求を満たすことができませんでした。一方、海上自衛隊では、老朽化したSNJ練習機の後継機を必要としていました。しかし、海自は航空自衛隊とは異なり、大型機中心の運用を行っていたため、空自が使用するT-34Aをそのまま採用することは困難でした。

そこで、富士重工はKM-1をベースに、搭乗口を左舷に変更し、装備品を海自仕様にしたKM-2を開発しました。KM-2は1962年7月16日に制式採用され、海上自衛隊のパイロット養成に貢献しました。

海上自衛隊での運用と退役



海上自衛隊では、KM-2を62機導入し、初等訓練に活用しました。その後、陸上自衛隊も高高度性能に着目し、KM-2を練習・連絡機TL-1として導入しました。しかし、教育課程の変更により、陸自の機体は海自に引き渡され、名称もKM-2となりました。

1989年から後継機であるT-5への機種更新が始まり、1998年3月3日にKM-2は全機退役しました。KM-2の退役とともに、海上自衛隊からレシプロ機が姿を消し、時代はターボプロップエンジンへと移行しました。

機体構造：堅実な設計



KM-2は、レシプロエンジン単発の小型プロペラ機で、機首にエンジンとプロペラを搭載し、低翼配置の主翼を持つという、一般的な構造です。座席は並列複座に加え、補助席を備えた4座席となっています。エンジンはIGSO-480-BIA過給機付きに換装され、プロペラはハーツェル製3枚羽根に変更されています。

海上自衛隊の機体は、キャビンの出入り口扉を右側から左側に変更し、装備品も海自仕様に合わせられています。また、訓練機として安全性を重視し、飛行計器や航法設備の強化、完全複式操縦装置の搭載が施されています。

スペック



  • - 乗員：2名/乗客：2名
  • - 全長：7.94m
  • - 全幅：10.00m
  • - 全高：2.92m
  • - 自重：1,212kg
  • - 最大離陸重量：1,750kg
  • - エンジン：ライカミング IGSO-480-AIF6 × 1
  • - 出力：340hp
  • - 最大速度：380km/h
  • - 航続距離：920km
  • - 離陸滑走距離：420m
  • - 着陸滑走距離：440m

配備基地



- 鹿屋航空基地
- 小月航空基地（鹿屋より移転）

事故




派生型



  • - XKM：LM-1を改造した試作機。
  • - KM：量産型の民間機。
  • - KM-1：陸上自衛隊向けの練習機（未採用）。
  • - KM-2：海上自衛隊向け練習機。
  • - TL-1：陸上自衛隊向けの練習連絡機。
  • - KM-2B：航空自衛隊練習機応募用の試作機（タンデム複座）。
  • - T-3：KM-2Bの量産機。
  • - KM-2D：エンジンをターボプロップに換装した試作機。
  • - T-5：KM-2Dの量産機（KM-2後継機）。
  • - KM-2F：KM-2Dのキャビンを改造した試作機。
  • - T-7：KM-2Fの量産型（T-3後継機）。

脚注



KM-2は、海上自衛隊のパイロット育成に大きく貢献した機体です。その堅実な設計と高い信頼性は、多くのパイロットを空へと送り出してきました。退役後もその功績は忘れられることなく、航空史にその名を刻んでいます。

関連項目



もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。