KTMコミューター

KTMコミューターとは

KTMコミューターは、マレーシアのクアラルンプール近郊とバターワース近郊で運行されている近距離旅客輸送サービスです。マレー鉄道（KTM）が運営しており、通勤・通学などの日常生活に欠かせない交通手段となっています。全線が電化複線化されており、スムーズな運行が可能です。

マレーシアでは、都市間を結ぶ長距離旅客輸送サービスとしてKTMインターシティが運行されていますが、KTMコミューターは都市近郊の短距離輸送に特化している点が特徴です。

歴史

クアラルンプール近郊の鉄道の歴史は、1886年にクアラルンプールとスンガイ・クランを結ぶ路線が開通したことに始まります。その後、路線網は徐々に拡大し、1905年までに現在の路線の基礎が完成しました。

しかし、モータリゼーションの進展とともに鉄道輸送は衰退。1980年代に入ると、クアラルンプール近郊では慢性的な交通渋滞が発生するようになり、その対策として鉄道が見直されることになりました。そこで、既存の鉄道網を電化複線化し、電車を導入するとともに、駅間隔を短縮するための新駅を設置するなど、大規模な近代化プロジェクトが実施されました。こうして1995年8月、KTMコミューターの運行が開始されました。

KTMコミューターは、既存の路線を活用して運行されており、新線は建設されていません。そのため、KTMインターシティや貨物列車と線路を共有しています。現在も路線の電化複線化と新駅の建設が進められており、運行区間の拡大が図られています。

路線再編

KTMコミューターの運行開始当初は、「ラワン - タンジュン・マリム路線」「ラワン - スレンバン路線」「バトゥ・ケーブス - ポート・クラン路線」の3つのルートが運行されていました。しかし、2015年12月に「ラワン - タンジュン・マリム路線」はそのままに、残りの2路線が「バトゥ・ケーブス - スレンバン路線」と「ラワン - ポート・クラン路線」に再編されました。さらに2016年7月には、「ラワン - タンジュン・マリム路線」が「ラワン - ポート・クラン路線」に編入されました。

また、2015年10月には、スレンバン駅 - グマス駅間が「南区間」としてコミューターサービスを開始しましたが、2016年7月にはスレンバン駅 - タンピン駅間に短縮され、「バトゥ・ケーブス - スレンバン路線」に編入されました。

一方、2015年9月には「北区間」としてグルン - カムンティン路線（バターワース駅経由）が開業しました。その後の延伸を経て、現在は「バターワース - パダン・ブサール路線」と「ブキッ・ムルタジャム - パダン・ルンガス路線」の2つの路線が運行されています。

車両と運賃

使用される車両は、3両または6両の固定編成の電車です。ラッシュ時には、2編成を連結した6両編成で運行されることもあります。編成の中央の車両（3両編成の場合は1両、6両編成の場合は2両）は、女性専用車両として終日設定されています。

運賃体系はKTMインターシティとは異なり、同じ区間でも運賃が異なる場合があります。クアラルンプール近郊の路線では、ICカードのTouch 'n Goが全区間・全駅で利用可能です。

利用状況

KTMコミューターは、1日に約10万人が利用しており、その数は年々増加しています。特に近年では、年10%以上の伸びを示しています。これは、都市部の人口増加や道路混雑の深刻化に伴い、鉄道がより重要な交通手段として認識されているためと考えられます。

現在の運行区間

現在の運行区間は、以下の5つのルートに分かれています。

ラワン - タンジュン・マリム路線
ラワン - スレンバン路線
バトゥ・ケーブス - ポート・クラン路線
バターワース - パダン・ブサール路線
ブキッ・ムルタジャム - パダン・ルンガス路線

これらの路線は、運行区間の起点と終点の駅名を冠しており、今後運行区間に変更があった場合には、ルート名も変更される可能性があります。

主な出来事

ラワン - タンジュン・マリム路線

2007年4月21日：ラワン - ラサ間でシャトルサービス開始
2008年1月5日：クアラ・クブ・バル駅開業、ラサ - クアラ・クブ・バル間延伸
2009年6月1日：クアラ・クブ・バル - タンジュン・マリム間延伸

ラワン - スレンバン路線

1995年8月3日：ラワン - クアラルンプール間で公式試運転開始
1995年8月14日：ラワン - クアラルンプール間運行開始
1995年9月29日：Salak South - クアラルンプール間延伸
1995年11月20日：クアラルンプール - カジャン間延伸
1995年12月18日：カジャン - スレンバン間延伸、ラワン - スレンバン路線が現在のルートに
2001年4月16日：KLセントラル駅開業
2004年3月3日：スレンバン近郊で列車衝突事故発生
2004年8月23日：ミッド・バレー駅開業
2005年7月1日：Touch 'n Go導入
2006年7月1日：クポン・セントラル駅開業
2011年5月14日：スレンバン - スンガイ・ガドゥ間延伸

バトゥ・ケーブス - ポート・クラン路線

1995年8月28日：スントゥル - シャーアラム間運行開始
1995年9月29日：シャーアラム - クラン間延伸
2010年7月29日：バトゥ・ケーブス - スントゥル間延伸
2018年5月2日：スバン・ジャヤ - ターミナル・スカイパーク間運行開始

外部リンク

Keretapi Tanah Melayu Berhad

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