Keep On Fighting

長渕剛 19枚目のオリジナルアルバム『Keep On Fighting』：音楽性と背景、そして反響

2003年5月14日、長渕剛の19枚目のオリジナルアルバム『Keep On Fighting』がフォーライフミュージックエンタテイメントよりリリースされました。前作『空』から約2年ぶりとなる本作は、長渕剛自身が作詞作曲を手掛け、長渕剛と笛吹利明による共同プロデュースで制作されました。

アルバムの音楽性：実験的な試みと長渕剛らしさ

このアルバムは、それまでの長渕剛のイメージを覆すことを目指して制作された、実験的な要素の強い作品です。レゲエやヒップホップといった、長渕剛のこれまでの音楽性からは想像しにくいジャンルに挑戦し、それらの要素を積極的に取り入れています。

音楽ライターの藤井徹貫氏は、文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』において、本作について「サウンド的には、まるでミュージックミュージアムだ」と評し、ヒップホップ調の表題曲からレゲエ、ウクレレを使ったハワイアン、フォークロア、カントリーなど、多様なアレンジが施された楽曲が収録されていることを指摘しています。

一方で、ライターの五井健太郎氏は『文藝別冊 長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌』で、一見すると迷走のように見える音楽性の変化も、どれもが「まぎれもない<長渕剛の作品>」となっていると分析しています。特に、「Keep On Fighting」のヒップホップ風のサウンドや「LANIKAI」のレゲエ調の楽曲、そしてウクレレを弾き語りで奏でる「翼」など、様々な音楽的試みが聴くものを魅了します。また、長渕剛の代表曲の一つである「桜島 SAKURAJIMA」も収録されており、彼のキャリアにおける重要な作品の一つであることがわかります。

制作背景：横浜スタジアム公演、テレビドラマ出演、そしてラジオ番組

『Keep On Fighting』のリリース前には、いくつかの重要な出来事がありました。2002年9月7日には、長渕剛の46歳の誕生日を記念した横浜スタジアムでの単独公演を開催。さらに同年11月には、ビートたけしの著書を原作としたTBS系テレビドラマ『少年』に出演するなど、精力的に活動していました。

2003年4月には横浜スタジアムライブの模様を収録したライブビデオをリリースし、同年4月から9月にかけてはニッポン放送のラジオ番組『長渕剛のオールナイトニッポンフライデースペシャル・今夜もバリサン』でメインパーソナリティを務めました。先行シングル「しあわせになろうよ」もリリースされ、オリコンチャートで最高位2位を獲得するヒットとなりました。また、極真会館から分派した新極真会の会歌も制作し、話題となりました。これらの活動が、『Keep On Fighting』の制作にも影響を与えたと考えられます。

リリースとプロモーション：シングル「しあわせになろうよ」を中心とした展開

『Keep On Fighting』は2003年5月14日にリリースされ、初回生産分にはオリジナルステッカーが封入されました。また、「しあわせになろうよ」との連動キャンペーンも実施されました。

プロモーション活動としては、「しあわせになろうよ」のPVが制作され、テレビ朝日『ミュージックステーション』やNHK『夢・音楽館』、『おしゃれカンケイ』、そして13年ぶりとなるNHK紅白歌合戦にも出演し、同曲を披露しました。

コンサートツアー：野外ライブと全国ツアー

アルバムリリース後には、「LIVE 2003 KEEP ON FIGHTING野外Live Tour」と題した野外コンサートツアーが開催されました。4都市4公演の野外ライブに加え、「LIVE 2003 KEEP ON FIGHTING」と題した全国ツアーも29都市29公演に渡り行われました。横浜赤レンガパークでのライブはDVD『Keep On Fighting LIVE 2003 夏』としてリリースされました。

批評：高い評価と長渕剛の進化への注目

『Keep On Fighting』は、音楽情報サイト『CDジャーナル』や『GiGS』、『タワーレコード』など、多くのメディアから高い評価を受けました。音楽性の幅広さ、そして長渕剛の変わらぬ気迫と表現力が称賛されています。文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』や『文藝別冊 長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌』でも、本作は「実験的な作品」でありながら、「長渕剛の新たな一面を示す重要な作品」と評されています。

チャート成績：男性アーティスト初の快挙

オリコンチャートでは最高位1位を獲得し、登場回数51回、約24万枚のセールスを記録しました。この結果により、長渕剛は男性アーティストとしてオリジナルフルアルバム首位獲得通算10作目を達成するという快挙を成し遂げました。

収録曲：多様な楽曲群

アルバムには、「情熱」「Keep On Fighting」「LANIKAI」「八月の雨の日」「人生はラ・ラ・ラ」「翼」「頑張れ!」「傷ついた鳥」「桜島 SAKURAJIMA」「しあわせになろうよ」の10曲が収録されています。それぞれの楽曲は、異なる音楽性とテーマを持ち、長渕剛の幅広い表現力を見事に示しています。

まとめ

『Keep On Fighting』は、長渕剛の音楽キャリアにおいて重要な転換点となる作品です。音楽性の幅を広げ、新たな挑戦を続ける彼の姿勢と、変わらぬ熱意が凝縮された一枚と言えるでしょう。オリコンチャートでの成功、そして多くのメディアからの高い評価は、その質の高さを証明しています。リスナーは、このアルバムを通して、長渕剛の進化と、彼の音楽に対する情熱を深く感じることができるでしょう。

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