L (ORIGINAL LOVEのアルバム)

ORIGINAL LOVE|Original_Love アルバム『L』

1998年9月18日にリリースされたORIGINAL LOVE|Original_Loveの8枚目のスタジオアルバム『L』は、前作『ELEVEN GRAFFITI』から導入し始めた打ち込みを大幅に進化させ、田島貴男自身がほぼ全ての音作りを手掛けた意欲作です。作詞も全て田島が担当し、彼の内面が色濃く反映されたパーソナルな作品となりました。

アルバムのコンセプト

田島は、アルバム制作にあたり、サウンドだけでなく全体のイメージや風景を重視したと語っています。特に、海外旅行から帰国した際に目にした渋谷のコギャルたちの姿に衝撃を受け、その風景をアルバムに落とし込みたいと考えました。当時、社会現象となっていたコギャル文化や、テレビのワイドショーで報道される事件など、日常に溢れるノイズや違和感といったものを、音楽を通して表現しようとしたのです。

田島は、過去の作品が音楽的な純粋さを追求していたのに対し、『L』では、社会に対する自身の視点や感情をストレートに表現したいと考えました。これは、当時の社会に対する疑問や、人々が拠り所を失っているように感じたことが背景にあります。特に、日本社会における精神的な拠り所の希薄さや、表面的な流行にすがる若者たちの姿に、田島は違和感を覚えたといいます。

サウンドの変化

従来のバンドサウンドから、打ち込みを多用したサウンドへと変化した背景には、「新聞やテレビから見える現代の風景」がありました。田島は、音楽という表現形式に固執せず、小説や映画といった他のメディアでも表現できるような作品を作りたいと考え、その手段として打ち込みを取り入れました。テクノなどの音楽からの影響ではなく、社会に対する彼の個人的な視点が、サウンドの変化を促したのです。しかし、あくまでも打ち込みは手段であり、目的ではないと強調しています。

アルバムタイトルである「L」は、その形状が「転換点」や「曲がり角」を象徴していると田島は述べています。制作当時、自身の音楽の方向性が見えなかった時期でもあり、試行錯誤の結果、このアルバムが生まれたと語っています。

収録曲について

• - M-2「水の音楽」：ポニーキャニオンと雑誌『GROOVE』主催のリミックスコンテストの課題曲として、アカペラバージョンが収録されました。後にシングル「冒険王」に収録された“OASIS IS MINE mix”はその優秀作品です。
• - M-5「ハニーフラッシュ」：ライブ＆リミックスアルバム『XL』で「ハニーフレッシュ」と改題され、スタジオライブで再録されました。バッファロー・ドーターによるリミックスも収録されています。
• - M-10「インソムニア」とM-12「白い嵐」：同じく『XL』でリアレンジされ、スタジオライブで収録されました。

パッケージとアートワーク

初回盤は特殊三面デジパック仕様で、ジャケットやブックレットには、デザイナー駿東宏が主宰する雑誌『Module』で発表された“BODY SCAPE”が使用されています。CDトレイ裏には、包帯を巻いた田島のイラストが描かれており、後にライブで田島が実際にこの姿で登場。その姿がアナログ盤「Honey Flesh」のジャケットにも使用されました。初回盤・通常盤ともに、潰れたタバコの空き箱のイラストがデザインされた切り抜きが同封されていました。

収録曲リスト

1. Wedding of The Housefly (Instrumental)
2. 水の音楽
3. ドラキュラ
4. 宝島
5. ハニーフラッシュ
6. Crazy Love
7. 大車輪
8. 呆気ない幕切れ (Instrumental)
9. 羽毛とピストル
10. インソムニア
11. 神々のチェス
12. 白い嵐

クレジット

• - VOCAL, CHORUS, GUITARS, PROGRAMMING: 田島貴男
• - MANIPULATE: 岸利至
• - DRUMS: 山木秀夫 (M-2, M-6), 小島徹也 (M-10)
• - BASS: バカボン鈴木 (M-2, M-6), 沖山優司 (M-10)
• - ACOUSTIC PIANO: 中西康晴 (M-2, M-6)
• - SYNTHESIZER: 中山努 (M-10)
• - PERCUSSION: 三沢マタロウ (M-2)
• - STRINGS: 金子飛鳥グループ (M-2, M-6, M-8, M-12)
• - SCRATCH: TURN TABLIST L?K?O (M-4, M-7)

スタッフ

• - producer: 田島貴男
• - mix down engineer: 森岡徹也 (SME), 田島貴男
• - recording engineer: 森岡徹也, 橋本仁司 (SME), 田島貴男
• - mastering engineer: 鈴木浩二 (SME)

『L』は、ORIGINAL LOVE|Original_Loveの音楽性を新たな段階へと導いた、挑戦的な作品といえるでしょう。

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