LAST TEENAGE APPEARANCE

『LAST TEENAGE APPEARANCE』は、日本のシンガーソングライター、尾崎豊が1987年10月21日にCBS・ソニーからリリースしたキャリア初のライブアルバムです。副題には「THE MYTH OF YUTAKA OZAKI（尾崎豊の神話）」が冠されています。この作品は、尾崎の10代の活動を集大成として記録するため、プロデューサーの須藤晃氏の発案・監修によって制作が進められましたが、当時の尾崎本人はその制作過程にほとんど関与していなかったとされています。

収録ライブの背景

アルバムに収められているのは、尾崎が10代を締めくくるコンサートツアーとして、1985年11月から1986年1月にかけて全国26都市で開催した「LAST TEENAGE APPEARANCE」の中から、1985年11月15日に国立代々木競技場第一体育館で行われた公演の模様です。

このツアー最終日の福岡公演終了後、尾崎は無期限の活動休止を宣言し、同年6月にはニューヨークへ渡りました。彼が渡米中の1986年には、代々木公演の映像を編集したテレビ番組が大きな反響を呼び再放送されるなど、その存在への注目度は高まっていました。また、新宿ルイードでのデビューライブから代々木公演までの映像を含むフィルムコンサートも約20万人を動員しています。

1987年1月に帰国した尾崎は、レコード会社をCBS・ソニーから新設されたマザーアンドチルドレンへ移籍。その後、新たなツアーの開始が発表されますが、体調不良により公演が延期、さらには途中で中止となるなど、不安定な時期を迎えていました。本作は、まさに尾崎が活動の転換期にあったこの時期にリリースされたことになります。

ライブパフォーマンスと制作

収録対象となった代々木オリンピックプール第一体育館でのライブは、11月14日と15日の2日間にわたって開催され、チケットは即日完売、2日間で延べ3万人を動員する盛況ぶりでした。アルバムには、この11月15日公演で演奏された全20曲の中から13曲が選ばれて収められています。

バックを務めたバンド「Heart Of Klaxon」は、このツアーからキーボードに樫原伸彦氏を新たに迎え、さらに音色の厚みを増すため、そしてメロディーを丁寧に表現するためにシンセサイザーも加えるなど、編成が強化されていました。ライブは10代の終結を象徴するように「卒業」から幕を開けています。

この公演中のMCで、尾崎は「ここにあつまってきてくれたお前らの中に、俺と一緒に本物の愛や真実をみつめようと歩いてゆく連中がいるならば、俺はそいつの為に命を張る」と語り、大きな反響を呼びました。

アルバムの企画は須藤晃氏によるもので、タイトルは田島照久氏の提案が採用され、副題は須藤氏が考案したものです。前述の通り、尾崎本人は発売自体は了承したものの、当時の精神的な状況から制作に深く関わることはありませんでした。須藤氏は後に、このアルバムのリリースが尾崎の苦悩を解消できなかったかもしれないと述懐しています。

収録されなかった7曲のうち、「Teenage Blue」「坂の下に見えたあの街に」「ハイスクールRock'n'Roll」「Freeze Moon」は、後年リリースされたライブビデオ『LAST TEENAGE APPEARANCE』に収録されています。また、「米軍キャンプ」「Scrap Alley」の映像は、2005年のNHK番組内で放送されましたが、パッケージ化はされていません。

リリースと商業的成功

本作は1987年の初回リリース時に、LP2枚組、CD2枚組、CT2本組という形態で発表されました。その後も複数回再リリースされており、特に1991年5月15日にはCDのみで再リリースされ、これが累計売上80万枚を突破する最大のヒットとなりました。日本レコード協会からもダブル・プラチナ認定を受けています。

オリコンアルバムチャートでは、初回盤が最高位第2位を記録。1991年再リリース盤も最高位第6位となり、長期にわたってランクインしました。尾崎死去直後の1992年5月25日付けのチャートでは、当時の最新作『放熱への証』が1位となる中、本作を含む過去のアルバム6作品がベスト10入りを果たすという現象が見られました。

2012年8月29日には、4枚組CD-BOX『LIVEBEAT BOX』に収録される形で再リリースされましたが、ディスク1枚に収めるため、オリジナル収録の「Driving All Night」「街の風景」「存在」の3曲がカットされ、「Teenage Blue」がボーナストラックとして追加されています。

批評

本作に対する評価は、音楽評論家の間で賛否両論が見られます。フリーライターの河田拓也氏は、このライブでの尾崎が以前のような日常への不満をぶつけるスタイルから、聴衆を勇気づける歌唱へと変化した一方、「闇雲な勢いやスリルは失われてもいた」とし、ボーカルと演奏のバランスが悪いミックスに否定的な評価を示しました。一方、評論家の栗原裕一郎氏は、活動休止と渡米によってファンを裏切った形となった尾崎にとって、このアルバムが「失速する穴を埋めるタイミングで発表されたことは、尾崎にとっても救いだったのではないか」と肯定的な見方を示しています。

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