Heart Of Klaxon

Heart Of Klaxon（ハート オブ クラクション）

Heart Of Klaxonは、日本のシンガーソングライターである尾崎豊が、その音楽活動において長年にわたり起用したバックバンドの一つです。尾崎豊のキャリアを通じて、バックバンドの名称やメンバーはツアーやライブの度に変化しており、特に20代に入ってからは、所属レーベルの移籍や個人事務所の設立、あるいは本人の心境の変化などが影響し、メンバー構成が大きく異なる時期がありました。Heart Of Klaxonという名称は、主に10代の頃から1987年の「TREES LINING A STREET TOUR」まで使用されたバンドに付けられています。また、1988年9月12日の東京ドーム公演「LIVE CORE」におけるバンドは「The Last Of Klaxon」、そして1991年の「1991 BIRTH TOUR」を支えたバンドは「THE BIRTH TOUR BAND」として知られています。

結成の経緯

Heart Of Klaxonの始まりは、かつて「APRIL BAND」として活動していたミュージシャンたちに遡ります。彼らは1983年12月31日に渋谷エッグマンで行われた年越しライブに出演しており、その様子を観ていた人物がいました。それは、マザーエンタープライズ所属のバンド「ストリート・スライダース」のマネージャーを務めていた本木元氏です。本木氏はAPRIL BANDのギタリストである鴇田靖氏の高校時代の同級生であり友人でした。本木氏がAPRIL BANDに対し、尾崎豊のバックバンドを務めないかと打診したことから話は進み、APRIL BANDのリーダーであった井上敦夫氏がこの提案を受け入れた結果、Heart Of Klaxonが結成されることとなりました。

初期活動（1984年）

Heart Of Klaxonとしてのライブデビューは、1984年3月15日に新宿ルイードで行われた尾崎豊のデビューライブでした。これに先立つ2月12日には、デビューに向けた準備として千葉マザースでアマチュアバンドの前座を務め、6曲を披露しています。新宿ルイードでは3月15日以降も5月8日、9日と公演を行い、5月10日には京都ビブレホールでのラジオ番組主催ライブに参加しました。同年6月15日には札幌ペニーレインから6大都市ツアー「LIVE HOUSE APPEARANCE」を開始。札幌、仙台、名古屋、梅田、広島、福岡と各地を回り、6月28日に福岡ビブレホールでツアーを終えました。その後も7月にかけて千葉、横浜、浦和での単独公演や、日比谷野外大音楽堂での白井貴子氏のライブ前座（7月1日）、映画「フットルース」試写会の前座ライブ（7月15日）など精力的に活動を展開しました。しかし、8月4日に日比谷野外大音楽堂で開催された反核イベント「アトミック・カフェ」に出演した際、ライブ中に尾崎が左足を骨折するというアクシデントが発生。これにより、以降のスケジュールは全てキャンセルを余儀なくされました。怪我からの回復を経て、Heart Of Klaxonは12月3日の秋田市文化会館公演から、初の全国ツアーとなる「FIRST LIVE CONCERT TOUR」（全国21都市）をスタートさせ、翌1985年2月7日の札幌教育文化会館公演をもって完遂しました。

TOGツアーからLTAツアー（1985年-1986年）

「FIRST LIVE CONCERT TOUR」終了後、尾崎本人やメンバーからサクソフォンを取り入れたいという要望が持ち上がり、オーディションが実施されましたが、適任者は見つかりませんでした。そこで、APRIL BANDのアマチュア時代からの知り合いで、同じライブハウス「横浜放送局」に出入りしていた阿部剛氏に声がかかり、Heart Of Klaxonにサクソフォン奏者として加入することとなりました。阿部氏を加えた新たな体制での初ライブは、1985年5月5日に合歓の郷で行われた「NEMU SPRING FESTIVAL '85」への参加でした。その翌日、5月6日の立川市民会館から「TROPIC OF GRADUATION TOUR」（TOGツアー）が幕を開けます。このツアーは8月25日の大阪球場公演でクライマックスを迎え、26,000人という当時のツアー最大動員数を記録し、盛況のうちに終了しました。TOGツアー終了後の9月、ギターの江口正祥氏とキーボードの井上敦夫氏がバンドからの脱退を表明します。井上氏の正式脱退に伴い、新たなメンバーのオーディションが実施され、ピアニストとして樫原伸彦氏、キーボーディストとして松原博氏が新たに迎え入れられました。江口氏はその後脱退を撤回し、バンドに残留することを選択しました。新メンバーを加えた体制で、1985年11月1日に四日市市文化会館から「LAST TEENAGE APPEARANCE TOUR」（LTAツアー）がスタートしました。このツアー中、11月14日、15日の代々木オリンピックプール公演では2日間で30,000人の観客を動員し、ツアー最大の規模となりました。LTAツアーは、1986年1月1日の福岡国際センター公演をもって終了。このライブの後、尾崎豊は無期限の活動休止を発表しました。

TREES LINING A STREET TOUR（1987年）

1986年6月からニューヨークに滞在していた尾崎豊は、同年12月23日に帰国しました。そして、1987年2月10日には所属レーベルをCBSソニーから、事務所であるマザー・エンタープライズ内の新レーベルMOTHER&CHILDRENへと移籍します。活動休止を経て、1987年7月1日より「TREES LINING A STREET TOUR」が開始されました。このツアーでもバックバンドの名称は「Heart Of Klaxon」が引き継がれましたが、メンバー構成は大きく変更されており、初期からのメンバーはギターの江口正祥氏とサクソフォンの阿部剛氏のみとなっていました。ツアー中の主なライブイベントとしては、8月5日、6日に参加した広島平和コンサート「ALIVE HIROSHIMA '87」や、8月22日に熊本で開催されたロックイベント「BEAT CHILD」への出演があります。「BEAT CHILD」では大雨の中でのパフォーマンスが大きな話題となりました。このツアーで最大規模となったのは、8月29日、30日の有明コロシアム公演で、2日間で20,000人を動員しました。ツアーは9月24日の豊橋勤労会館公演が最後のライブとなる予定でしたが、9月28日の新潟県民会館での公演当日に尾崎が倒れ、ツアーは急遽中断。その後、尾崎は都内の病院に入院しました。そして同年12月22日、尾崎は覚醒剤取締法違反で逮捕され、これにより一時的に活動は完全に休止することになります。

その後のバックバンドと「NO ONE IS TO BLAME」

1988年2月22日に釈放された尾崎豊は、活動を再開します。同年夏、シングル「核」とアルバム「街路樹」の制作において、音楽プロデューサーの吉野金次氏の依頼により、アレンジャーとしてサックス奏者の本多俊之氏が起用されました。本多氏は、同年9月12日に東京ドームで開催された伝説のライブ「LIVE CORE」でバックバンドを務めた「The Last Of Klaxon」にも参加しています。このライブから、尾崎のバックバンドとしては初めてコーラスが加わりました。1990年以降、尾崎は事務所をマザーエンタープライズからROAD&SKYへ、さらに自らが設立したアイソトープへと移籍。レコード会社もMOTHER&CHILDRENから再びCBSソニーへと戻るなど、環境が変化しました。そして、1991年5月20日に横浜アリーナからスタートした「1991 BIRTH TOUR」では、バックバンドは「THE BIRTH TOUR BAND」として活動。このバンドは「The Last Of Klaxon」からコーラス以外のメンバーが一新された顔ぶれでした。このツアーは同年10月30日の代々木オリンピックプール第一体育館公演をもって終了し、これが尾崎豊にとって生前最後のライブとなりました。翌1992年4月25日、尾崎豊は肺水腫のため急逝。同年6月10日から開始予定だった「TOUR 1992 “放熱への証” Confession for Exist」は中止となりましたが、このツアーもTHE BIRTH TOUR BANDがバックを務める予定でした。

尾崎豊が亡くなった1992年の秋、THE BIRTH TOUR BANDのキーボーディストである西本明氏が発起人となり、他のメンバーと共にインストゥルメンタルアルバム『NO ONE IS TO BLAME』が制作されました。このアルバムは同年10月1日にソニー・ミュージックレコーズからリリースされ、幻に終わった「TOUR 1992 “放熱への証”」のためにアレンジされていた楽曲の演奏が収録されています。「卒業」や「I LOVE YOU」といった代表曲も、新たなアレンジで演奏されています。アルバムのタイトル「NO ONE IS TO BLAME」は、尾崎がニューヨーク滞在中に好んで聴いていたというハワード・ジョーンズの同名の楽曲から取られています。収録曲のうち「虹」は、後に発売されたライブビデオ『約束の日 LAST APPEARANCE（完全版）』のメニュー画面BGMとして使用されています。

歴代メンバー

Yutaka Ozaki & Heart Of Klaxon
1984年3月15日 - 1985年2月7日、および「アトミック・カフェ」
尾崎豊 - ボーカル、ピアノ、ギター、ブルースハープ
鴇田靖 - ギター
江口正祥 - ギター
田口政人 - ベース
井上敦夫 - キーボード
吉浦芳一 - ドラムス

Yutaka Ozaki & Heart Of Klaxon
「TROPIC OF GRADUATION TOUR」（1985年5月6日 - 8月25日）
尾崎豊 - ボーカル、ピアノ、ギター、ブルースハープ
鴇田靖 - ギター
江口正祥 - ギター
田口政人 - ベース
井上敦夫 - キーボード
吉浦芳一 - ドラムス
阿部剛 - サクソフォン、フルート、パーカッション

Yutaka Ozaki & Heart Of Klaxon
「LAST TEENAGE APPEARANCE TOUR」（1985年11月1日 - 1986年1月1日）
尾崎豊 - ボーカル、ピアノ、ギター、ブルースハープ
鴇田靖 - ギター
江口正祥 - ギター
田口政人 - ベース
樫原伸彦 - ピアノ
松原博 - キーボード、シンセサイザー
吉浦芳一 - ドラムス
阿部剛 - サクソフォン、フルート、パーカッション

Yutaka Ozaki & Heart Of Klaxon
「TREES LINING A STREET TOUR」（1987年7月1日 - 9月24日）、「ALIVE HIROSHIMA '87」、「BEAT CHILD」
尾崎豊 - ボーカル、ギター、ピアノ、ブルースハープ
江口正祥 - ギター
甲斐完司 - ギター
樫原伸彦 - キーボード
勝又隆一 - キーボード
入江“タロー”直之 - ベース
西尾純之介 - パーカッション
伊藤真視 - ドラムス
阿部剛 - サクソフォン、フルート、パーカッション

Yutaka Ozaki & The Last Of Klaxon
「LIVE CORE」（1988年9月12日 東京ドーム）
尾崎豊 - ボーカル、ギター、ピアノ、ブルースハープ
本多俊之 - サクソフォン
高水健司 - ベース
村上“ポンタ”秀一 - ドラムス
土方隆行 - ギター
野力奏一 - キーボード
岩本章子 - コーラス
山根栄子 - コーラス
水嶋康宏 - コーラス

Yutaka Ozaki & THE BIRTH TOUR BAND
「TOUR 1991 BIRTH & TOUR 1991 BIRTH ARENA TOUR 約束の日 THE DAY」（1991年5月20日 - 10月30日）
尾崎豊 - ボーカル、ギター、ピアノ、ブルースハープ
西本明 - キーボード
長田進 - ギター
鈴川真樹 - ギター
渡辺茂 - エレクトリックベース
滝本季延 - ドラムス
里村美和 - パーカッション
関誠一郎 - サクソフォン、キーボード
岩本章子 - コーラス
* 山根栄子 - コーラス

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