LCOS

LCOS（Liquid Crystal on Silicon）とは

LCOS（エルコス）は、プロジェクターやリアプロジェクションテレビに使用されるマイクロプロジェクション技術です。DLPプロジェクターと類似した反射型デバイスですが、LCOSは独立したミラーではなく液晶を使用しています。また、透過型LCDプロジェクターとは異なり、反射型を採用している点が大きな特徴です。

LCOSデバイスでは、シリコンチップ上に直接液晶が配置され、その表面を覆うアルミニウム層や受動層が高い反射率を実現します。この技術は2000年代初頭に、液晶やプラズマディスプレイよりも高度なシリコン技術を用いて、比較的高解像度の画像を提供していました。そのため、高価格帯の大型リアプロジェクションテレビや高解像度プロジェクターといった用途で需要がありました。

LCOS技術の発展

2004年には、Intelがフラットパネル向けの大型で安価なLCOSチップ生産計画を発表しましたが、コスト問題から中止となりました。一方、ソニーは2005年にSXRDを搭載したプロジェクターを市場に投入しました。この製品では、1080pの解像度を持つ3つのLCOSチップを使用し、動的レンズ制御により高いコントラスト比を実現しました。

2006年にはLCOSの量産技術が確立され、複数のメーカーがコンシューマー市場にLCOSベースのリアプロジェクションテレビを供給するようになりました。現在、主なLCOS技術には、ソニーのSXRD、Syntax-BrillianのGen II LCOS、JVCケンウッドのD-ILAなどがあります。また、SpatialightはLCOSチップを提供するサードパーティーとして知られています。

Displaytechは、単板式LEDバックライト方式の直視型LCOSデバイスを開発し、デジタルカメラの電子式ビューファインダーにも使用されています。これらのデバイスには強誘電性液晶が用いられ、他の液晶方式よりも高速に動作します。さらに、JVCケンウッドはD-ILAを用いたカーナビゲーション用ヘッドアップディスプレイも市販しています。

デバイス構造

LCOSデバイスは、シリコン基板と対向する透明基板の間に液晶を挟み込む構造を持ちます。シリコン基板側には液晶駆動回路と画素電極があり、透明基板と液晶層を通過した光は画素電極で反射されます。透過型液晶デバイスとは異なり、画素電極下に回路が作られているため、高い開口率を実現できます。ただし、色純度の長期安定性や応答速度は他のデバイスに劣るという欠点もあります。

投影構造

LCOSディスプレイには、3板式と単板式の2つのカテゴリーがあります。3板式では、色ごとにディスプレイチップがあり、光学的に画像を合成します。一方、単板式では、1つのディスプレイチップが赤、緑、青の画像を連続的に表示し、カラーホイールやRGB LEDで単色照明を行います。単板式は安価ですが、カラーブレーキングを避けるために高速なディスプレイ部品が必要です。

3板式では、各パネルの膨張係数の差により画素ズレや色ムラが発生する可能性があります。また、単板式にはRGBカラーフィルタを貼付して白色光を利用する設計もあり、小型プロジェクターの廉価な実現に用いられます。

3板式設計

DLPデバイスと同様に、3板式LCOSも光を3箇所に分離してから合成しますが、LCOSでは偏光処理も必要となるため、より多くのビームスプリッタを使用します。画素ズレが発生しやすい欠点がありますが、補正機能を備えた機種も存在します。

単板式設計

単板式プロジェクターには、ソニーのLSPX-P1やXperia touchなどがあります。これらの製品にはSXRDが採用されています。海外メーカーでは、フィリップスやUneed Systemsが単板式LCOSプロジェクターを製造しています。

関連項目

プロジェクタ
リアプロジェクションテレビ
[The Society for Information Display]
日本液晶学会

外部リンク

D-ILA技術情報
SXRDプレスリリース
SXRD overview from Sony
Gen II LCoS overview from Syntax-Brillian Corporation

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