リアプロジェクションテレビ

リアプロジェクションテレビとは

リアプロジェクションテレビ（以下、リアプロ）は、テレビ受像機の一種で、内蔵されたプロジェクターを用いてスクリーンの背後から映像を投影する方式を採用しています。フロントプロジェクターがスクリーンの前方から投影するのに対し、リアプロは背後からの投影が特徴です。

概要

リアプロは、小型のブラウン管や液晶パネルで生成された画像をミラーで反射させ、スクリーンに投影します。1990年代後半まで、40インチ以上の大型ブラウン管や薄型テレビの製造技術が確立されていなかったため、2000年前後にプラズマディスプレイが大型化するまでの間、リアプロは大画面テレビの唯一の選択肢でした。特にアメリカや中国で広く普及しましたが、日本ではその奥行きの大きさから、一般家庭での普及は限定的でした。主にホールやホテルの宴会場、オフィスビルのロビーなどで、映像モニターやデジタルサイネージとして利用されました。

2005年頃には、技術の進歩により奥行きの縮小化やハイビジョン対応モデルが登場し、薄型テレビと並ぶ選択肢として注目を集めましたが、その後の薄型テレビの価格低下と性能向上により、コスト面で競争力を失いました。結果として、日本では2008年までに各メーカーが一般向け製品の生産・販売から撤退し、世界市場でも2012年までにその歴史を終えました。ただし、業務用システムとしてはしばらく販売が続けられました。

利点と欠点

長所

価格: 当初は大画面テレビとしては比較的安価でした（ただし、薄型テレビの量産化によりこの優位性は失われました）。
色表現: 3色混合表示による自然で奥行き感のある色表現が可能です。
応答速度: 高速な応答速度を実現でき、特にソニーのSXRD搭載モデルでは2.5ms以下という速さでした。
高コントラスト: SXRDやD-ILAなどのデバイスでは、高いコントラスト比（5000:1以上、セットコントラスト10000:1）を実現しました。
省電力: 同サイズの液晶やプラズマテレビと比較して省電力です（60型程度で約200W分の省電力）。
輝度回復: ランプ交換により輝度を回復させることが可能です（ユーザーによる交換も可能）。
高精細化: 高精細な映像表示が可能です。
軽量: 構造がシンプルで、同じインチ数のテレビと比較して軽量です。

短所

明度: スクリーンに直射日光が当たる場所では明度が不足します（ただし、透過光のため環境光の影響は少ない）。
視野角: 縦方向の視野角が狭いです。
明度ムラ: 適正視聴距離以下では、画面四隅に明度ムラが発生します。
ランプ寿命: ランプ寿命が短く、交換費用が必要です（1個あたり1万5000～2万5000円程度）。
奥行き: 薄型テレビに比べて奥行きが大きいです。
傷つきやすさ: 画面表面に軟質素材を使用しているモデルが多く、物理的な衝撃で傷が付きやすいです。
画面焼け: 家庭用ゲーム機を接続すると画面焼けを起こす可能性がありました。

メーカーの動向

1990年代後半から、各メーカーはブラウン管方式のリアプロから撤退し、ソニーが透過型液晶パネルを用いた「グランドベガ」を発売しました。これは北米市場で好評でしたが、日本市場では販売が伸び悩みました。2004年になると、セイコーエプソンがアメリカで、自社パネルを用いたリアプロを販売、日本ではエプソンダイレクトが直販を開始しました。また、三洋電機もエプソンのパネルを搭載したリアプロを販売しました。一方、日本ビクターは独自のLCOSデバイス「D-ILA」を用いたリアプロを開発し、北米で発売しました。

ソニーは独自のLCOSデバイス「SXRD」を開発し、高画質モデルを発売しました。三菱電機はDMDを用いたDLP方式で比較的薄型のリアプロを開発し、シャープもDLP方式で参入しました。LEDやレーザーを用いたバックライト、薄型筐体モデルも登場しましたが、液晶テレビやプラズマテレビの価格低下と競争力の低下により、リアプロ市場は急速に縮小し、2007年にはソニーが撤退、日本ビクター、エプソンも生産を終了しました。キヤノンと東芝は参入を表明したものの、市販化には至りませんでした。

方式

ブラウン管

初期のリアプロでは、ブラウン管が用いられていました。1管方式から、赤、青、緑のカラーフィルタを用いた3管方式が主流になりました。

LCD (透過型液晶)

透過型液晶は、バックライトの光を制御して映像を生成します。画素の格子が目立つことがあります。初期には1板タイプも存在しましたが、現在は3-LCD方式が主流です。

LCDを推奨する主なメーカー

セイコーエプソン
三洋電機
ソニー
富士通ゼネラル
日立製作所
松下電器産業

LCOS (反射型液晶)

反射型液晶は、電極を液晶の背面に配置することで開口率を向上させています。表面から光源を当て、その反射によって映像を作成します。LCDよりも高輝度で階調性に優れますが、コストが高いという欠点があります。量産に成功したメーカーは限られています。

LCOS を推奨する主なメーカー

日本ビクター
ソニー
Syntax-Brillian

DLP

DLPは、TEXAS INSTRUMENTSが開発したDMDを用いた全デジタル処理の信号処理方式です。微小な鏡を画素数だけ並べたDMDに光を当てて映像を作ります。1枚のパネルタイプと3枚のパネルタイプがあり、1枚パネルのタイプは低コストですが、色の表現力がやや劣ります。

DLPを推奨する主なメーカー

サムスン電子
シャープ
三菱電機
東芝
NEC
BARCO
Christie

関連項目

映像機器
高精細度テレビジョン放送（HDTV）
HDMI
スクリーン
The Society for Information Display（SID：世界最大のディスプレイ学会）

外部リンク

D-ILA技術情報
SXRDプレスリリース
SXRD overview from Sony
Gen II LCoS overview from Syntax-Brillian Corporation#top

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