LE-5

LE-5エンジン概要

LE-5は、宇宙開発事業団（NASDA、現JAXA）が、航空宇宙技術研究所（NAL）、三菱重工業（MHI）、石川島播磨重工業（現IHI）と共同で開発した液体燃料ロケットエンジンです。液体酸素（LOX）と液体水素（LH2）を推進剤とする実用エンジンとして、日本で初めて開発されました。

1975年に開発が始まり、日本のH-Iロケットの第2段エンジンとして運用されました。開発分担は、燃焼器製造などを三菱重工業が、ターボポンプやガスジェネレータ製造を石川島播磨重工業が担当。開発には、液体水素エンジン研究で先行した東京大学宇宙航空研究所（現宇宙科学研究所）の技術成果がコンポーネントにフィードバックされています。

主要な特徴

LE-5の重要な特徴は、宇宙空間での軌道上再着火能力です。H-Iロケットで日本として初めて成功し、この技術はLE-5Aを経て、LE-5Bでは再々着火まで可能となり、ミッションの柔軟性を高めました。推力調整機能（スロットリング）はLE-5およびLE-5Aにはありませんでしたが、LE-5Bでは段階的な推力調整が可能となりました。

構造と動作の概要

LE-5は、ガスジェネレータサイクルを採用しています。これは、推進剤の一部を燃焼させてターボポンプを駆動し、主推進剤を高圧で供給する方式です。構造上の革新点として、独自の始動方式「クーラントブリードサイクル」が挙げられます。これは、燃焼室冷却用の液体水素の一部を利用してタービンを回す信頼性の高い方法で、従来のスターターを不要とし、世界で初めて実用化されました。燃焼室は、管構造燃焼器という形式で、液体水素による再生冷却により耐熱性を確保しています。

技術的意義

LE-5の開発成功により、日本は液体水素・液体酸素ロケットエンジンの高度な技術を自立的に確立しました。この技術基盤は、後のH-IIロケットに搭載されたLE-7、LE-7Aといった大型エンジンの開発に不可欠であり、日本の宇宙輸送能力向上に大きく貢献しました。LE-5は、日本のロケットエンジン開発史における重要な節目となるエンジンです。

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