LMSタービン蒸気機関車

ターボモーティブについて

ターボモーティブ（Turbomotive）は、1935年にロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道（LMS）で試作された蒸気タービン機関車です。この機関車は、LMSの技師長ウィリアム・スタニアーによって設計され、1933年よりクルー工場で製造が始まりました。ターボモーティブは、プリンセス・ロイヤル級の派生型としての位置づけであり、6202号機として知られています。

機関車の特性

この機関車の特異な点は、従来のレシプロ機関ではなく蒸気タービン機関を採用していることです。これは、スタニアーがスウェーデンのGrangesberg-Oxelousund鉄道で実見したタービン機関車に触発された結果であり、燃料と水の効率を改善し、保守コスト削減を目指しました。ターボモーティブの設計は、板台枠にベルペア式の広火室を持つ円錐形ワゴントップボイラーが載せられた、非常に洗練されたものでした。

具体的には、ターボモーティブは軸配置2C1のパシフィック機として、かつてのグレート・ウェスタン鉄道時代に設計された6000形（キング級）の設計を基にしています。しかし、シリンダーは全て撤去され、前進用のメインタービンと後進用のリバースタービンが取り付けられました。この仕様により、機関車の外観は一新され、サイドロッドが取り付けられた動輪の姿が見られました。

ターボモーティブは、復水式ではないにもかかわらず、蒸気機関に比べて優れた熱効率を持つ数少ない蒸気タービン試験機の一つです。特にメインタービンには6つのノズルが搭載されており、蒸気の流量を調整する際に、速度の変化に応じてノズルを個別に制御することで出力を調整することが可能でした。このデザインにより、1936年から1945年の間において30万マイル以上を走行することができたのです。

技術的成果とその後

しかし、1949年にメインタービンの故障によってタービンが取り外され、修理は行われませんでした。スタニアーが国有化された鉄道を去った後、ターボモーティブの運命は変わっていきました。ボイラーの圧力は250psi（約1.7 MPa）で、メインタービンの回転速度は毎分7060回転、出力は2400馬力に達しました。この効率の高さは、タービンの設計に起因しており、運用時の燃料消費はロイヤル・スコット級よりも約6%少なかったと報告されるほどでした。

プリンセス・アンへの改造

6202号機が国有化された後、1952年には通常型の機関車に改造され、46202号機「プリンセス・アン」という名前が与えられました。しかし、運用開始からわずか2か月後の1952年10月8日に発生したハーロウ・ウィールドストーン鉄道事故に巻き込まれ、脱線転覆しました。事故の影響で46202号機は大きな損傷を受け、その後修理の可否が検討されましたが、最終的には修復不可能との判断が下され、廃車とされました。

再利用可能な部品はイギリス国鉄へと戻されたものの、ターボモーティブの歴史はこれで幕を閉じることとなり、独特な技術の実験機としての評価を受けながらもその姿を消していきました。

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