LNER A1形・A3形蒸気機関車

LNER A1形・A3形蒸気機関車の概要

LNER A1形およびA3形蒸気機関車は、ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道（LNER）に属する歴史的な蒸気機関車の形式です。この機関車は、ナイジェル・グレズリーの設計によるもので、軸配置は4-6-2（パシフィック）となっています。A1形は基本形で、A3形はその改良型として知られています。多くのA1形機関車は、その後A3形に改造され、両者はしばしば同じシリーズに分類されることがあります。さらに、A3形はイギリスの量産蒸気機関車の中で初めてパシフィック軸配置を採用したもので、その存在は鉄道の進化に大きな影響を与えました。

A1形の開発

A1形の開発は、1911年に始まりました。この機関車は、イーストコースト本線の急行列車を効率よく運行するために設計され、ナイジェル・グレズリーが技術責任者を務めていたグレート・ノーザン鉄道（GNR）において提案されました。最初の12両は1922年から1923年にかけて製造され、続いて67両が1924年から1935年の間に製造されました。オリジナルの名称はありませんでしたが、1924年に有名な競走馬の名前を冠して再命名されました。

A1形の製造費用は他の競合に比べて高く、初期の10両の単価は£8,560となりました。1923年のGNRの合併によってLNERが誕生すると、A1形はLNERの急行機関車として幅広く使用されるようになりました。特に、4472号機「フライング・スコッツマン」は、その性能から多くの注目を浴び、公式に時速100マイルを超えた初めての機関車としての地位を獲得しました。

A1形の設計は、シリンダーの弁装置と呼ばれる複雑なシステムを採用し、特にメンテナンスが手間のかかるものでした。潤滑油のパイプに関する問題が重要な課題であり、交換作業にはボイラーの取り外しが必要だったため、運用上の負担が大きくなりました。

A3形の改良

A1形に関連する問題を解決した後、グレズリーはその改良型であるA3形の開発に取り掛かりました。特に2555号機「センティナリー」はシリンダーの直径を減少させ、ボイラーの圧力を180PSIから220PSIに引き上げるなど、多くの革新をもたらしました。A3形は、急行列車の牽引力を強化し、A1形以上の成功を収めました。2750号機「パピルス」は、イギリス鉄道における新記録である108mphの速度を達成し、A4形に進化するための基盤となりました。

第二次世界大戦中、A3形は重要な輸送手段として活用され、多くのトラブルに見舞われました。特にグレズリー式弁装置には問題が多く、他の形式は戦後に2気筒式に改良される一方で、A3形とA4形はその特有の技術を残したまま保存されています。

機関車の保存と文化的影響

4472号機「フライング・スコッツマン」は、解体を免れ現在も保存されています。1968年から1972年までアメリカで、その後1988年にはオーストラリアで運転され、オーストラリアでは蒸気機関車による最長の無停車運転記録を打ち立てました。

この機関車は、イギリスの絵本『汽車のえほん』シリーズにも登場し、物語の中で重要な役割を果たしています。A1形・A3形蒸気機関車は、その魅力と歴史的背景から、鉄道ファンのみならず、幅広い人々に愛されています。

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