LOTポーランド航空16便胴体着陸事故

2011年11月1日、LOTポーランド航空16便（ボーイング767-300ER型機、登録番号SP-LPC、愛称「ポズナン」）が、ワルシャワ・ショパン空港に胴体着陸する事故が発生しました。この事故は、着陸装置が正常に作動しなかったことが原因ですが、幸いにも搭乗していた231名全員に怪我はありませんでした。ポーランド国家航空機事故調査委員会（PKBWL）によって航空事故として分類されています。

事故の概要

事故機は、ニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港からワルシャワへ向かう定期便として運航していました。離陸直後、油圧系統の故障が発生し、主脚に動力を供給する作動油がすべて失われたことが、初期調査で判明しています。

事故機は製造から14年が経過しており、事故当時は修理が困難なほどの損傷を負ったため、2013年11月に解体されました。

事故発生の経緯

ニューアークを離陸後、約30分後に機長は油圧システムの異常を示す計器表示に気づきました。大西洋横断に必要な燃料を消費するため、そのままワルシャワへ飛行を続けることが決定されました。乗客には、3時間後に故障の事実が伝えられました。

ワルシャワ空港への着陸直前、フラップは作動したものの、着陸装置が正常に展開しないことが判明。着陸を中断し、機長は管制塔に油圧系統の故障を報告しました。その後、1時間以上空港周辺を旋回し、燃料を消費するとともに、地上では緊急対応部隊が着陸に備えました。ポーランド空軍のF-16戦闘機による目視確認でも、着陸装置が展開していないことが確認されています。

代替手段での着陸装置展開も試みられましたが、失敗に終わりました。

胴体着陸

事故機は、難燃剤が散布された33番滑走路に胴体着陸を実施。乗員乗客全員が90秒以内に避難しました。空港は、事故対応のため閉鎖され、周辺道路も交通規制が敷かれました。ワルシャワ行きの他の航空機は、他の空港へダイバートまたは出発地へ引き返しています。

避難した乗客は、空港施設内で心理カウンセリングを受け、深刻な怪我を負った人はいませんでした。空港は、滑走路の破片除去と安全確認のため、2日間閉鎖されました。

事故調査の結果、降着装置の代替展開システムに関わるサーキットブレーカー（C829）が作動していたことが判明。着陸後、ブレーカーをリセットしたところ、代替システムで正常に降着装置が展開しました。その後、事故機はLOT航空のメンテナンス格納庫へ牽引されました。

この事故で、乗組員の適切な判断と対応が評価され、ポーランド大統領（当時）のブロニスワフ・コモロフスキ氏は、乗務員と消防隊長に勲章を授与しました。

事故調査

中間報告書によると、離陸直後に油圧漏れが発生したことが判明しました。漏洩箇所は中央油圧システムのホースで、これにより、システム内の作動油が全て失われました。この油圧低下は、EICAS（エンジン指示・乗員警告システム）とフライトデータレコーダーに記録されています。

また、床面で飛び出したサーキットブレーカーが適切なフェイルオーバーに移行していれば、代替システムで降着装置を作動させることができた可能性も指摘されています。

事故機の機長と一等航空士は、豊富な飛行経験を持っており、ボーイング767型機での飛行時間も15,000時間を超えていました。

まとめ

LOTポーランド航空16便の胴体着陸事故は、油圧系統の故障が原因で発生しましたが、乗員の冷静な判断と適切な対応、そして地上の支援体制により、乗員乗客全員が無事に避難することができました。この事故は、航空機の安全管理における油圧系統の重要性と、緊急時における乗員の役割を改めて認識させる出来事となりました。

脚注

1] [ポーランド国家航空機事故調査委員会

外部リンク

Drugie Oświadczenie Tymczasowe Państwowej Komisji Badania Wypadków Lotniczych dotyczące badania wypadku lotniczego nr 1400/2011 – 31 October 2013 （ポーランド語） (Archive)
Second Interim Statement of the State Commission on Aircraft Accident Investigation on investigation into air accident No 1400/2011 – 31 October 2013 (Archive)
Preliminary Report (English) (Archive)
Preliminary Report (Polish) (Archive)

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