LOVE SONGS (長渕剛のアルバム)

長渕剛セカンドベストアルバム『LOVE SONGS』：過酷なツアーを経て届けられた、繊細なラブソング集

1986年5月1日にリリースされた長渕剛のセカンドベストアルバム『LOVE SONGS』は、それまでのキャリアを象徴するラブソングを中心に構成された作品です。単なるラブソングの集大成というだけでなく、彼の内面を反映した、複雑で奥深い音楽性を感じさせる一枚となっています。

過酷なツアーと精神的苦悩

本作リリースの背景には、前作『HUNGRY』に伴う全国ツアー「LIVE'85 - '86 HUNGRY」での過酷な状況がありました。52都市全62公演という大規模なツアーは、開始直前の体調不良による入院、そして毎日39度を超える高熱との闘いを強いられた過酷なものだったのです。点滴で発熱を抑えながらのステージ、ステージ後の昏倒、体重53kgを下回るまで衰弱していく体…それでもツアーは続けられました。しかし、ツアー最終日の日本武道館公演後、長渕は過労のため入院。予定されていた残りの公演は全てキャンセルとなりました。

ツアーの過酷さ以上に、彼を追い詰めたのは健康状態の悪化だけではありませんでした。バックバンドとの不和、スタッフへの不信感など、精神的な負担も相当なものでした。ツアー終了後には重度の鬱状態に陥ったと伝えられています。そのような状況の中で制作された『LOVE SONGS』は、彼の心の内面を反映した、いわば彼の魂の叫びとも捉えることができるでしょう。

選曲と楽曲について

『LOVE SONGS』は、初期3部作『風は南から』『逆流』『乾杯』からの選曲は一切なく、それ以降のアルバムから選りすぐりのラブソングが収録されています。中には、シングル「勇次」のB面曲「LONG LONG TIME AGO」のように、アルバム初収録となる楽曲も含まれています。また、「POOR BOY'S BLUES」はボーカルのみ再録音、「DON'T CRY MY LOVE」はリミックスされ、ボーカルのみ再録という、ファンにとって嬉しい試みも凝らされています。これらのアレンジは、彼の音楽性の進化、そして彼の心の変化を反映していると言えるでしょう。

収録楽曲は、彼の代表的なラブソングの数々です。それぞれの楽曲には、彼の生き様、そしてその時々の彼の心情が投影されていると言えるでしょう。これらの楽曲は、単なる恋愛の歌というだけでなく、普遍的な人間の感情、喜びや悲しみ、希望や絶望などを表現した、彼の心の深い部分に触れることができる作品です。

リリースとチャート成績、そして評価

レコード、カセットテープ、CDの3形態でリリースされた『LOVE SONGS』は、オリコンチャートで最高位8位、約4万枚の売上を記録しました。2006年には24ビット・デジタルリマスター版がリリースされ、再びチャート入りを果たしています。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、本作について「いつものキュイーンというヘヴィなギター・サウンドはここには聴かれない。やっぱりラヴ・ソングは荒っぽい男らしさより、穏やかな優しさが、らしい雰囲気」と評し、再録音された「DON'T CRY MY LOVE」や「POOR BOY'S BLUES」については「ファンには嬉しい限り」と高く評価しています。これらの評価は、彼の音楽性の多様性と、その深い魅力を端的に示しています。

まとめ

『LOVE SONGS』は、単なるベストアルバムという枠を超えた、長渕剛の音楽人生、そして人生そのものを凝縮した作品と言えるでしょう。過酷なツアーを経て、精神的な苦悩を乗り越え、それでもなお音楽を続ける彼の強い意志と、繊細な感性が融合した、彼のキャリアにおいて重要な位置を占める作品です。穏やかで優しいラブソングの数々は、彼の音楽の新たな魅力を提示し、リスナーの心に深く刻まれることでしょう。

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