LP 944-20

LP 944-20：フレアを放つ褐色矮星

ろ座に位置するLP 944-20は、地球から約20.9光年の距離にある褐色矮星です。この天体は、1975年にWillem Jacobによって発見された当初、小さく暗い赤色矮星と考えられていました。

しかし、1998年にChris G. TinneyがLP 944-20の大気中にリチウムが存在することを発見したことで、その正体が明らかになりました。恒星では核融合反応によってリチウムが速やかに失われるため、この天体の質量が太陽の約6%であることから、褐色矮星であると結論付けられました。リチウムの存在を除けば、LP 944-20のスペクトルはM9V型の恒星とよく一致しています。

LP 944-20は、褐色矮星としては比較的明るく、比較的若い天体であると推測されています。天体のモデルに基づいた計算では、その年齢は4.75億年から6.5億年と推定されていますが、空間運動を考慮するとカストル運動星群に属する可能性があり、その場合はさらに若い3.2億年とされています。

距離の測定

LP 944-20までの距離については、1996年に測定された年周視差（201.4±4.2ミリ秒角）に基づき、4.96パーセク（約16.2光年）とされていました。しかし、2014年の新しい測定では、年周視差が155.89±1.03ミリ秒角となり、これに基づくと距離は6.41パーセク（約20.9光年）に修正されました。2016年の別の研究やガイア計画のデータでも、この新しい年周視差が裏付けられています。

褐色矮星のフレア現象

一般的に、誕生間もない褐色矮星は重水素核融合によって一時的に輝きますが、重水素がわずかしか存在しないため、すぐに核融合反応は停止します。その後は、核融合反応の余熱と重力収縮によって、わずかに赤外線を放射しながら冷えていきます。そのため、褐色矮星は通常、活動的ではないと考えられてきました。

しかし、1999年12月5日、NASAのチャンドラX線観測衛星がLP 944-20からX線フレア現象を捉え、天文学者を驚かせました。このフレアは1～2時間にわたって続き、そのエネルギーは太陽の小規模フレアに匹敵するもので、木星で観測されたX線フレアの10億倍もの規模でした。この現象は「吼えるネズミ」と表現されました。

当初、フレアは持続的なもので、エネルギー源は磁場のねじれだと考えられていました。しかし、2001年にLP 944-20のフレアには休止期があること、そして磁場も赤色矮星に比べて弱いことが発見されました。この観測結果を説明するものとして、星内部の乱流によって磁場が集積し、まれに激しいフレアを起こすという説が提唱されました。

LP 944-20は、その特異な性質とフレア現象を通じて、褐色矮星の研究における重要な対象となっています。

脚注

（このセクションには脚注はありません）

参考文献

（このセクションには参考文献はありません）

関連項目

近い恒星の一覧

外部リンク

THE 100 NEAREST STAR SYSTEMS
* Sol Station LP 944-20

もう一度検索