LPDDR

LPDDR（Low-Power Double Data Rate）とは

LPDDR（Low-Power Double Data Rate）は、省電力に特化したSDRAMの派生規格のメモリです。初期のものはモバイルDDR（mDDR）とも呼ばれていました。主にノートパソコンや携帯電話などのモバイルデバイスでの利用を想定して設計されており、その低消費電力性が最大の特徴です。

特徴

LPDDRは、モバイルデバイスの限られたバッテリー容量で動作時間を最大化するために、消費電力を大幅に削減する設計がなされています。最新のLPDDRは、モバイルアプリケーションのニーズに合わせて最適化されており、標準的なDDR SDRAMとは異なる多くの技術が採用されています。また、LPDDRの技術標準は、本家のDDRとは独立して開発されており、LPDDR5はDDR5 SDRAMよりも先に実装されました。

バス幅

標準的なSDRAMは、64ビット幅のメモリバスで接続されることが多いですが、LPDDRでは16ビットまたは32ビット幅のチャネルも利用できます。これにより、より柔軟な設計が可能になり、消費電力の削減にも貢献します。また、LPDDRの「E」バージョンは、仕様の拡張バージョンを示すもので、最大266.7MHzのメモリアレイのオーバークロックを型式化することで、パフォーマンスを向上させています。

LPDDRの世代

LPDDR (1)

オリジナルの低消費電力DDRは、2006年にリリースされました。DDR SDRAMをベースに、消費電力を抑えるための改良が加えられています。主な変更点として、供給電圧が2.5Vから1.8Vに減少したことや、温度補償リフレッシュ、部分アレイのセルフリフレッシュ、ディープパワーダウンモードなどが挙げられます。これにより、更なる省電力化が実現しました。この技術は、サムスンやマイクロンが主なサプライヤーとなり、iPhone 3GS、初代iPad、Samsung Galaxy Tab 7.0、Motorola Droid Xなどのデバイスに採用されました。

LPDDR2

2009年にリリースされたLPDDR2は、LPDDR(LPDDR1)を改良した第二世代のLPDDRシリーズです。2010年にJEDECによって標準化されました。前世代と比較して、帯域幅が3.2GB/sから4.8GB/sに拡張され、メモリクロック数も200MHzから300MHzに向上しました。さらに、動作電圧が1.8Vから1.2Vに減少し、消費電力が約40%削減されています。チップサイズも小型化され、より大容量のメモリ製造が可能になりました。主にiPhone 4SやGalaxy S3などのモバイルデバイスに採用されました。

LPDDR3

LPDDR3は、LPDDR2の後継として開発され、データ転送速度の向上と消費電力の削減が図られました。モバイルデバイスだけでなく、組み込みシステムなどにも広く利用されています。

LPDDR4

LPDDR4は、LPDDR3からさらに性能が向上し、高速なデータ転送と低消費電力を両立しました。スマートフォンやタブレットなどの高性能なモバイルデバイスに広く採用されています。

LPDDR4X

LPDDR4Xは、LPDDR4をベースに、更なる省電力化を追求した規格です。同じ性能でより消費電力を抑えることができ、バッテリー駆動時間の延長に貢献しています。

LPDDR5

LPDDR5は、データ転送速度の大幅な向上と低消費電力を両立させた最新世代のLPDDRです。AI処理や高解像度動画の処理など、より高い性能が求められるモバイルデバイスに採用されています。

LPDDR5X

2021年7月28日、JEDECはLPDDR5Xの規格を発表しました。LPDDR5Xは、最大8533 Mbit/sまでの高速化、信号品質の改善、新しいアダプティブリフレッシュ管理による信頼性の向上を実現しました。サムスン電子は、業界初のLPDDR5X DRAMを開発し、マイクロンもMediaTekとの協力で、LPDDR5X DRAMの検証を完了しています。2024年には、マイクロンが9.6Gbps、サムスンが10.7Gbpsの製品を出荷する予定です。

LPDDR5T

2023年1月25日、SKハイニックスは業界初のLPDDR5Tを開発しました。最大9.6Gbpsの速度を実現し、16GBの製品が提供されています。Qualcomm TechnologiesのSnapdragon 8 Gen 3 Mobile Platformとの互換性検証を完了し、MediaTekのDimensity 9300にも採用されています。

CAMM2

CAMM2(Compression Attached Memory Module)は、DellのエンジニアTom SchnellによってIntelと共同で開発された交換可能なLPDDR5/5Xモジュール規格です。2023年12月5日、JEDECが標準化を発表しました。これにより、ノートパソコンなどのデバイスでメモリの交換が可能になります。

まとめ

LPDDRは、モバイルデバイスの発展に不可欠なメモリ規格であり、その進化は常に最新の技術トレンドを反映しています。省電力性能と高速データ転送能力を両立させることで、モバイルデバイスの可能性を広げ続けています。

脚注

出典：マイクロン、エルピーダ、ナンヤ、サムスン、JEDEC

外部リンク

マイクロン
エルピーダ at the Wayback Machine
ナンヤ
サムスン
JEDECページ：低電力ダブルデータレート3 SDRAM（LPDDR3）

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