LRASM

長距離対艦ミサイル（LRASM）の概要

長距離対艦ミサイル（LRASM）は、アメリカ海軍および国防高等研究計画局（DARPA）によって開発された、先進的な対艦ミサイルです。このミサイルは、従来のハープーンミサイルの後継として位置付けられ、ロッキード・マーティン社によって生産が行われています。

特徴と技術

LRASMは特に、外部の情報システムとの接続が失われた場合でも、自律的に攻撃を実行できる機能を持っています。この特徴は、搭載された測的システムによって実現されており、ここには人工知能（AI）が組み込まれています。AIを利用することで、目標を正確に識別し、移動ターゲットへの精密な攻撃が可能となります。また、敵対環境下でも初期目標を迅速に特定できる能力を備えています。

このように設計されることで、LRASMは敵の防空システムを回避しつつ、把握した目標に対して効果的に攻撃を行うことができます。従来、多くの対艦ミサイルはレーダーを使用して終末誘導を行っていましたが、LRASMではBAEシステムズが開発したRF受信機と画像赤外線を組み合わせた複合シーカーが使用されています。このシステムにより、敵の対空レーダーから発せられる電波を利用し、常に目標を追尾できる特性を持っています。これにより、敵の妨害行為に対しても強固な耐性を示すことができます。

開発の経緯

LRASMの開発は2009年から始まり、当初は2つの異なる設計案を基に進められました。まず、LRASM-Aはロッキード・マーティン社のAGM-158 JASSM-ERの弾体設計を流用した亜音速巡航ミサイルであり、同社が主契約者として開発を進めました。一方で、LRASM-Bはより進んだ設計で、ロシアとインドが共同開発したブラモスと同様のラムジェットエンジンを採用し、超音速性能を目指していましたが、2012年初頭にその開発は中止されました。

2012年5月からは模擬弾によるLRASMのセンサー部に関する試験が開始され、2013年には3回の空中発射試験が実施され、さらに2014年には地上および水上からの発射試験も行われる見込みです。

2015年にはLRASMにAGM-158Cという型式番号が与えられ、2018年には初期作戦能力を獲得しています。LRASMは、B-1B爆撃機やF/A-18E/F戦闘機、F-35Cなどの航空機に加え、アメリカ海軍や海上自衛隊をはじめとする多数の国家の水上戦闘艦でもMk.41VLS（垂直発射システム）を使用して運用される予定で、国際的にも注目を集めています。

関連兵器

類似の対艦ミサイルには、過去に存在したトマホークの対艦用派生型であるBGM-109B TASM（射程460km）があるものの、すでに退役しています。また、ソビエト連邦が開発した長射程対艦ミサイルのP-700は射程900kmという特性を持ち、さらに日本で開発中の超音速空対艦ミサイルASM-3はステルス性を兼ね備え、射程150km以上の性能を発揮します。2020年度から2025年度にかけて、射程400km以上の改良型ASM-3も開発が進められています。

LRASMはその革新的な設計と能力から、今後の海上戦力において重要な役割を果たすことが期待されています。

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