LSI C-86

LSI C-86は、エル・エス・アイ・ジャパン株式会社が提供する16ビットCコンパイラであり、最新バージョンは3.5.9です。

概要

LSI C-86は、1988年に同社が16ビットCPU用のクロスコンパイラとして開発しました。これは同社のIntel 8080/Z80用コンパイラであるLSI C-80の兄弟版にあたります。C89規格に準拠していますが、`locale.h`は未実装であり、ワイド文字などC89以降の規格で標準Cライブラリに追加された機能も実装されていません。

このコンパイラはIntel 8086（およびコプロセッサIntel 8087）をサポートしており、Windows、Solaris、Linux、FreeBSDなどのOSに対応しています。MS-DOS版は2008年2月19日に販売終了しましたが、後述する「試食版」はMS-DOS版のみが提供されていました。

コンパイラの設計においては、メモリやレジスタの割り当てに特に重点が置かれています。当時の8086用Cコンパイラの多くが変数に割り当てられるレジスタを2つか3つしか持っていなかったのに対し、LSI C-86では宣言された変数の生存期間を解析し、全てのレジスタに対して可能な限り最適な割り当てを行います。また、8086シリーズの特徴である4つのメモリモデルを全てサポートしています。

8086用コンパイラとしては珍しく、デフォルトの呼出規約において、可変長引数ではない関数の引数をレジスタ渡しで処理します。

LSI C-86は商用ソフトウェアでしたが、バージョン3.30のMS-DOS版をベースにしたフリーウェア扱いのサブセット「試食版」が存在しました。この試食版は、パソコン通信やインターネット、雑誌『C MAGAZINE』（2006年休刊）の付録フロッピーディスクやCD-ROMなどを通じて配布されました。ライセンス条件として、生成物はフリーウェアとする必要がありました。試食版はスモールモデル（コードとデータがそれぞれ64KB以内）のみをサポートし、デバッグ機能やROM化機能が削除されるなどの制限がありましたが、マニュアルは付属していました。

LSI C-86の兄弟版であるLSI C-80を開発した技術者の森公一郎氏は、2015年に逝去されました。

脚注

外部リンク

LSI C-86 ver 3.5
エル・エス・アイ・ジャパン株式会社フリーソフトウェア集

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