LVS (軍用車両)

LVS (兵站車両システム) と LVSR (兵站車両システム改良型)

LVS (Logistics Vehicle System) は、アメリカ合衆国のオシュコシュ社が開発し、アメリカ海兵隊で運用されている、積載量10～20tクラスの大型軍用車両シリーズです。初期のLVSは、前部のトラクターユニットと後部のトレーラーユニットが連結された独特の8輪構造を特徴としていました。

2009年に登場した改良型のLVSR (Logistics Vehicle System Replacement) は、この連結機構を廃止し、10×10輪駆動のより堅牢な構造となっています。これにより、LVSRはより高い機動性と積載能力を獲得し、現代の戦場における多様なニーズに対応できるようになりました。

LVS の詳細

LVSは1985年に、それまで使用されていたM123 10tトラクターの後継としてアメリカ海兵隊に採用されました。アメリカ陸軍で採用されているHEMTT (Heavy Expanded Mobility Tactical Truck) やPLS (Palletized Load System) と類似する車両ですが、LVSの最大の特徴は、前部のトラクターユニット (FPU: Front Power Unit) と後部のトレーラーユニット (RBU: Rear Body Unit) が連結されて運用される点です。

RBUには、用途に応じて様々なタイプが用意されています。例えば、ISO規格の20フィートコンテナを搭載可能なフラットベッドトレーラー (Mk14) や、LVSを回収車として使用するためのウィンチとブームクレーンを装備したユニット (Mk15)、より長いM870セミトレーラーを連結するための連結器搭載トレーラーユニット (Mk16) などがあります。

LVSR の詳細

LVSRは2009年に実戦配備された新型車両で、前部・後部の連結機構を廃止し、10×10輪駆動の通常のトラック構造となりました。これにより、陸軍のPLSとほぼ同様の車両となっています。また、MTVRと同様のTAK-4サスペンションシステムの採用、装甲銃塔 (MCTAGS) の搭載、追加装甲キットの適用など、様々な改良が施されています。

LVSRは、アメリカ海兵隊のアフガニスタン紛争への作戦において、MTVRやMRAP、M-ATVと共に派遣され、実戦で使用されました。LVS・LVSRは、第二次世界大戦で使用されたM25戦車運搬車と同様に、"ドラゴンワゴン"と呼ばれることもあります。

LVSR のバリエーション

LVSRでは、FPU、RBUの分割構造は無くなり、10×10輪駆動トラックとなっています。従来のLVSと同様に、カーゴ型・回収車型・トラクター型が開発されています。

MKR15 TRUCK WRECKER, 10X10: MK15の後継に相当する軍用回収車/レッカー車仕様で、回収用ウィンチ、クレーンを装備しています。2011年より実戦配備。
MKR16 TRUCK TRACTOR, 10X10: MK16の後継に相当する、M870セミトレーラー連結用の連結器搭載ユニット。2011年より実戦配備。
MKR18 TRUCK, CARGO, 10X10: LVSRでは最初に配備されたタイプで、従来のLVSのMK14・MK17・MK18の後継に相当するコンテナ搭載用カーゴトラック。MK18と同様の積み下ろし機構を備えています。

関連項目

HEMTT: オシュコシュ製8×8輪駆動軍用トラック。アメリカ陸軍で採用。
PLS: オシュコシュ製10×10輪駆動軍用トラック。アメリカ陸軍で採用。
MTVR: オシュコシュ製6×6輪駆動7トン軍用トラック。LVS／LVSRと同様に海兵隊で運用されている。

LVSとLVSRは、アメリカ海兵隊の兵站を支える重要な役割を担っており、その進化は現代の戦場における兵站の重要性を物語っています。

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