M-ATV

M-ATV (MRAP All Terrain Vehicle)

M-ATV（MRAP All Terrain Vehicle）は、アメリカ合衆国のオシュコシュ社が開発した4×4輪駆動の耐地雷/伏撃防護装甲車（MRAP）です。従来の大型MRAPと同等の防御力を持ちつつ、より高い機動性を追求した車種として、M1114やM1151などの装甲型ハンヴィーの後継を目指して開発されました。その名の通り、"耐地雷/伏撃防護,全地形対応車"としての能力を備えています。

概要

2008年夏、アメリカ国防総省はアフガニスタンの厳しい地形に対応するため、機動性を重視したMRAPの検討を開始しました。提示された概略要求仕様に対し、20社を超えるメーカーから提案が寄せられ、同年12月には正式な要求仕様が決定。当時のM-ATVプログラムでは、最低372両から最大10,000両の調達が予定されていました。

2009年3月には、5社から提案された6種類の車種によるアメリカ陸軍での試験が開始されました。試験に供された車種は以下の通りです。

オシュコシュ社提案車両（後のM-ATV）
BAEシステムズ提案のケイマン派生型
BAEシステムズ提案のJLTV（Joint Light Tactical Vehicle）計画と同系列車種
フォース・プロテクションとジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ共同提案のチーターMMPV派生型
ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ・カナダ提案のRG-31派生型
ナビスター・インターナショナル提案のMXT-MV派生型

同年5月、RG-31が脱落した後、残りの5車種に対してテスト用車両の納品が要求され、評価が継続されました。そして6月30日、オシュコシュ社の提案車両が選定。アメリカ海兵隊のブロガン准将は、M-ATV選定の理由として、高い生存性、オシュコシュ社の技術力と生産能力、そして比較的低い車両単価を挙げています。

初期の量産発注では、約10億USドルで2,244両のM-ATVが発注され、後に調達数は5,244両にまで増加しました。内訳は、陸軍向け2,598両、海兵隊向け1,565両、特殊作戦軍（SOCOM）向け643両、空軍向け280両、海軍向け65両、テスト用93両です。

2009年7月には最初の量産車が納品され、10月にはアフガニスタンに到着。11月には納品数が1,000両を超えました。オシュコシュ社は国防総省との契約で月産1,000両の生産能力を要求されていましたが、12月にはウィスコンシン州オシュコシュとペンシルベニア州マッコネルズバーグでの分散生産体制により、その能力を獲得しました。2010年3月には、初回発注分が完納され、その後も追加調達が行われ、総計8,722両のM-ATVがアフガニスタンに派遣された陸軍、海兵隊、SOCOM、空軍に供給されました。

アフガニスタンでの大規模作戦終了後、アメリカ政府は約7,000両のM-ATVを維持することを決定しました。その一部は、2014年8月からオシュコシュ社による改修を受けており、最終量産パッチ相当への改修、車体下部追加装甲（UIK）の装着、改良された自動消火システム（AFES）の搭載などが実施されています。

また、オシュコシュ社は2013年に、無人自動車"テラマックス"のシステムをM-ATVに搭載する計画を発表。これにより、M-ATVを無人地上車両（UGV）として、対IED任務や危険地域での移動経路確保任務などに利用することが提案されています。

2015年2月には、M-ATVにM230 30mm機関砲をRWSを介して搭載し、射撃するデモンストレーションが行われました。

2015年8月には、アメリカ軍の次期軍用車両調達計画であるJLTV（Joint Light Tactical Vehicle）計画において、オシュコシュ社のL-ATVが選定されました。L-ATVはM-ATVの実戦での運用評価に基づいて開発された兄弟車両で、M-ATVよりも軽量で機動性が高く、ハンヴィーの後継として導入が進められています。

2023年9月のロシア軍のウクライナ侵攻では、ザポリージャ州ロボティーンの攻防において、ウクライナ軍がアメリカ軍から供与されたM-ATVで対戦車地雷を踏みましたが、乗員は全員無事でした。

バリエーション

M-ATVには、アメリカ軍とオシュコシュ社による形式分類が存在します。

アメリカ軍による形式分類

M1240: OGPK（装甲銃塔）搭載の基本型
M1240A1: M1240にUIK装着
M1277: M153 CROWS II搭載の発展型
M1277A1: M1277にUIK装着
M1245: SOCOM向け発展型
M1245A1: M1245にUIK装着

オシュコシュ社による形式分類

M-ATV スタンダード: 標準型
M-ATV SXB: 基本型
M-ATV SXU: アップグレード型
M-ATV SXF: 特殊作戦向け車両
M-ATV エクステンデッド: 積載容量拡張型
M-ATV EXI: 積載容量拡張型の基本型
M-ATV EXE: 工兵隊向け車両
M-ATV EXC: 指揮車両型
M-ATV EXM: 野戦救急車型
M-ATV 6×6: 6×6輪駆動の拡張型

採用国

アメリカ合衆国
クロアチア
ハンガリー
ポーランド
サウジアラビア
アラブ首長国連邦
ウクライナ
ウズベキスタン
イエメン
アフリカ連合

登場作品

漫画『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
ゲーム『コール オブ デューティ ゴースト』
ゲーム『ARMA3』

関連項目

全地形対応車
装輪装甲車一覧
歩兵機動車
ホークアイ
MRAP
L-ATV
クーガー、RG-31、RG-33、マックスプロ、ケイマン、バッファロー

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