LZ 130 (飛行船)

LZ 130「グラーフ・ツェッペリンII世」： 最後の巨大硬式飛行船

LZ 130（Luftschiff Zeppelin 130、登録符号D-LZ130）は、ツェッペリン飛行船会社が大戦間に建造した最後の巨大硬式飛行船です。ヒンデンブルク級飛行船の2番船にして最終船であり、「グラーフ・ツェッペリン」の名を受け継ぎました。初代「グラーフ・ツェッペリン（LZ 127）」が世界一周飛行などで名高いことから、本船はしばしば「グラーフ・ツェッペリンII世」と呼ばれます。

設計と開発

LZ 130の設計は、LZ 129ヒンデンブルクにいくつかの改良を加えたものです。特徴的な点として、エンジンポッドが再設計され、ディーゼルエンジンが牽引式のプロペラを駆動するようになりました。また、飛行中に失われる重量を最小限にするため、排気から水を回収するシステムが搭載されました。

客室も再設計され、食堂は後部甲板の中ほどに移設、展望室の窓はパネル半分だけ低くなりました。ガス嚢は軽量化のため、木綿の代わりに絹が使用されました。ゴンドラ下の着陸装置や上部のガス排出フードも形状が変更されています。船体外皮のドープ剤には、引火を防ぐため青銅と黒鉛が加えられ、電気伝導性も改善されました。

これらの改良により、LZ 130は当時最先端の技術を誇る硬式飛行船となりました。

当初、LZ 130は浮揚ガスとして水素を使用するよう設計されていましたが、ヒンデンブルク号の事故を受け、フーゴー・エッケナーは旅客飛行船での水素使用を断念し、ヘリウムの使用を決意します。しかし、ヘリウムの主要供給国であるアメリカ合衆国は、ドイツのオーストリア併合後、ヘリウムの供給を拒否。LZ 130は結局水素を使用せざるを得ませんでした。

建造日程

1936年6月23日：起工。竜骨据付
1937年2月14日：ノーズコーン取付
1937年5月6日：LZ 129ヒンデンブルク号爆発事故
1938年8月15日：ガス嚢充填開始
1938年8月20日：エンジンおよび電気系統の試験
1938年8月22日：無線通信システムの試験
1938年9月14日：命名式と初飛行。フーゴー・エッケナー博士がスピーチ
1938年11月14日：完成。

運航歴

LZ 130は、その短い生涯で30回の飛行を行いました。

処女飛行 (1938年9月14日)：フリードリヒスハーフェンを発ち、ミュンヘン、アウクスブルク、ウルムを通過。925kmを飛行。
2回目の飛行 (1938年9月17-18日)：26時間のテスト飛行。ボーデン湖上での測定、シュトゥットガルト、フランクフルト、ベルリン、ハンブルクなどを経由し、2,388kmを飛行。
ズデーテンラント飛行 (1938年12月)：宣伝省の命令による飛行。ライヒェンベルク（現リベレツ）上空でビラを投下。
諜報飛行 (1939年8月2-4日)：イギリスのレーダーシステムに関する情報を収集するため、イギリス東海岸を北上し、シェトランド諸島まで飛行。エルンスト・ブロイニング博士が同行。

この飛行では、スピットファイア戦闘機を初めて視認、写真撮影に成功しています。帰路では、イギリス代表団による船内調査を回避するため、偽の乗組員と入れ替わるという欺瞞工作が行われました。

最後の飛行 (1939年8月20日)：エッセン/ミュールハイム空港に立ち寄り、フランクフルトへ帰還。アルベルト・ザムトが指揮。

飛行船時代の終焉

1940年4月、ヘルマン・ゲーリングは金属資源を他の航空機に転用するため、「グラーフ・ツェッペリン」2隻と未完成のLZ 131の解体を命じました。飛行船の解体は4月27日までに完了。5月6日、フランクフルトの巨大な飛行船格納庫は爆破解体され、LZ 130の短い生涯は幕を閉じました。

要目

乗員: 約40名
乗客: 最大約40名
全長: 244 m
直径: 41.2 m
ガス容量: 200,000 m3
エンジン: ダイムラー・ベンツ16気筒985馬力ディーゼル・エンジン4基
最高速度: 131 km/h

LZ 130「グラーフ・ツェッペリンII世」は、時代の終焉を告げる象徴として、今もなおその名を歴史に刻んでいます。

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