Le Rire

『ル・リール』（Le Rire）は、フランス語で「笑い」を意味する言葉を誌名に冠した、1894年10月から1950年代にかけてパリで発行されていた週刊風刺雑誌です。出版業者のフェリックス・ジュヴァンによって創刊され、当初は娯楽雑誌としての側面を持っていました。

しかし、1894年に起きたドレフュス事件を機に、『ル・リール』は社会風刺雑誌としての色合いを強めていきます。当時のフランス政府は腐敗と失政を繰り返し、政治家や軍人は国民からの信頼を大きく失っていました。こうした社会情勢を背景に、『ル・リール』は反共和主義を批判する多くの出版物の一つとなり、権力者を風刺することで大衆の支持を集めました。

『ル・リール』の大きな特徴は、その美しい挿絵にあります。表紙、裏表紙に加え、見開きページにも挿絵が掲載され、視覚的にも読者を楽しませました。これらの挿絵を手掛けた画家たちは、当時を代表する錚々たる顔ぶれです。ロートレック、ジョルジュ・グルサ、エルマン＝ポール、フアン・グリス、リュシアン・メティヴェ、ジョルジュ・ムニエ、ジャン＝ルイ・フォラン、アドルフ・ウィレット、レオネット・カッピエロ、アルベール・ギョーム、アベル・フェーブル、ジュール＝アレクサンドル・グリューンといった画家たちが、それぞれの個性的なタッチで『ル・リール』の世界観を彩りました。

当時のパリは、演劇、キャバレー、カフェなどの文化が隆盛を極めていました。そのため、『ル・リール』には、イヴェット・ギルベール、ポレール、ジャンヌ・アヴリル、ガブリエル・レジェンヌといった、人気女優たちをモデルにした挿絵も数多く掲載されています。これらの挿絵は、当時の華やかな文化を今に伝える貴重な資料となっています。

『ル・リール』は、約60年もの長きにわたって刊行を続けましたが、1950年代に終刊を迎えました。その後、1970年代に短期間のみ復刊されましたが、その人気はかつてのようには戻りませんでした。しかし、『ル・リール』は、その美しい挿絵と社会風刺によって、フランスのジャーナリズム史に大きな足跡を残したことは間違いありません。

『ル・リール』は、当時の社会情勢、文化、芸術を色濃く反映した雑誌であり、その歴史的価値は非常に高いと言えるでしょう。挿絵を通して当時のパリの様子を伺い知ることができ、また、風刺を通して社会の動きを感じることができます。これらの点からも、『ル・リール』は、ただの風刺雑誌としてではなく、歴史的資料としての価値も持ち合わせていると言えるでしょう。

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