Linuxゲーム

Linuxゲームの歴史と現状

Linuxで動作するビデオゲーム、通称「Linuxゲーム」は、その黎明期から現在に至るまで、多様な歴史と進化を遂げてきました。ここでは、Linuxゲームの歴史、技術的な側面、そして市場の現状について詳しく解説します。

黎明期：Unixゲームからの発展

Linuxにおけるゲームの歴史は、Unixにおけるゲームシーンの拡張として始まりました。初期には、アーケードゲームやテキストベースのアドベンチャーゲームのクローンが中心で、「BSD Games」のようなインタラクティブフィクションの集合体が人気を博しました。また、自由ソフトウェアとオープンソースの理念が広まるにつれて、「NetHack」、「Netrek」、「XBill」といったフリーゲームが登場し、Linuxにおけるゲーム開発の基盤を築きました。

1990年代：商業ゲームの登場

1994年、Dave D. Taylorが「Doom」をLinuxに移植したことが、商業ゲームがLinuxプラットフォームに参入するきっかけとなりました。さらに、Crack dot Comが開発した「Abuse」がRed HatによってLinux版がリリースされたり、Taylor自身が「Quake」をLinuxに移植するなど、著名なタイトルが次々とLinuxに登場しました。1995年には、Linux向けゲームのカタログサイト「The Linux Game Tome」が開設され、Linuxゲームの情報を集約する動きも始まりました。1998年には、Originのプログラマーが「Ultima Online」をLinuxに移植しています。

1998年～2002年：Loki Softwareの登場

1998年11月には、Loki Softwareが設立され、Linuxゲーム業界における重要な転換点となりました。Lokiは商業的には成功しませんでしたが、「Loki インストーラ」や「SDL」の開発支援、「OpenAL」オーディオライブラリのプロジェクト開始など、Linuxゲーム開発の基礎となる多くのフリーソフトウェアやツールを開発しました。これらの成果は、現在でもLinuxゲーム開発の基盤となっています。

2002年～2010年：インディーゲームの台頭

Lokiの倒産後、Linuxゲーム市場は新たな局面を迎え、Linux Game PublishingやRuneSoftといった企業が移植を中心に活動しました。また、かつてLokiに所属していたRyan C. GordonがLinuxを含むプラットフォームへの移植を積極的に行いました。さらに、独立系ゲーム開発者がマルチプラットフォーム展開を行うようになり、Linuxは重要なターゲットプラットフォームの一つとなりました。デジタル配信プラットフォーム「Desura」の登場は、小規模な開発者にとってLinuxをゲームプラットフォームとして認識させる上で重要な役割を果たしました。

2010年～現在：SteamとUnityの参入

2012年7月、Valve Softwareがゲームエンジン「Source Engine」のLinux移植と、デジタル配信サービス「Steam」のLinux版リリースを発表し、Linuxゲーム市場は大きく活性化しました。Steamクライアントの登場は、他の開発者にもLinuxへのゲーム移植を促す効果がありました。また、2012年にはUnity Technologiesがゲーム制作システム「Unity」のLinux移植を行い、Unity製のゲームが容易にLinuxへ移植できるようになりました。2013年9月には、ValveがLinuxベースのゲームOS「SteamOS」を発表、2018年には、ゲーミングに特化したWineのフォークである「Proton」をリリースし、Linuxゲーム環境は大きく改善されました。

市場シェア

Steam Hardware Surveyのデータによると、2019年4月時点で、Linuxを主要OSとして利用しているユーザーは全体の0.81%です。また、Unityの統計では、2016年3月時点でLinuxユーザーがプレイヤー全体の0.4%を占めていました。さらに、Humble Bundleの最初の販売では、Linuxユーザーが全体の18%の売上を占めていました。これらのデータから、Linuxユーザーのゲームへの関心は高い一方で、市場全体から見るとまだ小規模であることがわかります。

ソフトウェアアーキテクチャ

LinuxカーネルをベースとしたOSは、ゲーム用にカスタマイズすることができ、「vanilla」Linuxカーネルを少し変更する方法や、Androidのように大幅に変更されたLinuxカーネルを使用する方法があります。

Linuxカーネル

Linuxカーネルには、ゲームのパフォーマンスを阻害しないサブシステムがすでに実装されており、追加のソフトウェアも利用可能です。例えば、BFS（プロセススケジューラー）やBFQ（I/Oスケジューラー）などが挙げられます。

ゲーム開発者向けのソフトウェア

Linux環境では、「GDB」、「LLDB」、「Valgrind」などの開発ツールが利用可能です。OpenGLのデバッガーとして「VOGL」も利用できます。さらに、オープンソースのRPG Makerクローンである「OpenRPG Maker」も開発が進められています。

インターフェースとSDK

Linux向けには、クロスプラットフォームに対応した様々なインターフェースやSDKが利用可能です。しかし、音声APIに関しては、PulseAudioプロジェクトのLennart Potteringが指摘するように、選択肢が多いがゆえに最適なAPIを選ぶことが難しいという課題も存在します。

マルチモニタ対応

Linuxでは、AMD EyefinityとAMD Catalyst、XineramaとRandRがX11とWaylandの両方でマルチモニタ環境をサポートしています。「Serious Sam 3: BFE」は、Linuxでネイティブに動作し、高解像度とAMD Eyefinityに対応したゲームの一例です。

Wine

Wineは、Linux上でWindows向けのソフトウェアを動作させるための互換レイヤーです。Wineのゲーム利用は、Linuxコミュニティで議論を呼ぶことがあります。これは、Wineの利用がネイティブゲームのプラットフォームとしてのLinuxの成長を妨げる可能性があると感じるユーザーがいるためです。

まとめ

Linuxゲームは、その黎明期から多くの困難を乗り越え、現在ではSteamやUnityといった大手企業の参入により、大きく発展を遂げてきました。今後もインディーゲーム開発者の積極的な参入や、技術的な進歩によって、さらに魅力的なプラットフォームへと成長していくことが期待されます。

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