SteamOS

SteamOSとは

SteamOSは、Valveが開発したLinuxディストリビューションであり、主にゲーム用途に特化したオペレーティングシステムです。オープンソースでありながら、一部にクローズドソースのコンポーネントを含んでいます。このOSは、Steam MachinesやSteam Deckといったデバイスの主要なオペレーティングシステムとして採用されています。

初期バージョンである1.0と2.0は、Debianディストリビューションをベースにしていましたが、後のバージョン3.0ではArch Linuxをベースとし、KDE Plasma 5デスクトップ環境を採用しました。SteamOSの当初の目的は、PCから同じネットワーク上の他のPCへビデオゲームをストリーミングすることでしたが、現在では独立したシステムとしても利用可能です。Valveは、SteamOSを通じてLinuxでのゲーム環境を向上させ、開発者にLinux互換性のあるゲームのリリースを奨励しています。

SteamOSの特徴

SteamOSは、一般的なPCハードウェアを用いて、まるでゲーム機のようにテレビに接続してゲームを楽しむことができる体験を提供します。これは、リビングルームなど、PCから離れた場所で快適にゲームをプレイすることを目的として設計されています。Linux用に開発されたゲームをネイティブで起動できるだけでなく、Steamストアから直接ゲームを購入することも可能です。さらに、ユーザーは自分のWindows、macOS、LinuxコンピュータからSteamOSが動作しているコンピュータへゲームをストリーミングすることもでき、家族間でのゲーム共有や、逆にデスクトップ版Steamへの共有制限も可能です。

Valveは、SteamOSが「グラフィックス処理のパフォーマンスを大きく進化させる」と主張しています。実際のSteamOSクライアントはクローズドソースですが、SteamOS自体はオープンソースであり、ユーザーはソースコードを自由にビルドしたり改造したりすることができます。

マウスやキーボードを使わないゲームプレイに特化しているため、Web閲覧やファイルマネージャ、画像ビューアなどの機能はデフォルトではインストールされていません。これらの機能を利用するには、GNOMEデスクトップ環境にアクセスしたり、別途ソフトウェアをインストールしたりする必要があります。現在のSteamOSはストリーミング再生をまだサポートしていませんが、ValveはSpotifyやNetflixとの提携を模索しています。ユーザーは、Steamストアを通じて独自のムービーメーカーで作成した映画を入手できます。SteamOSはNVIDIA、Intel、AMDのGPUをネイティブでサポートしています。

Valveは、映画、テレビ、音楽などのサポートを追加していますが、ビデオコンテンツはSteam自身のストアからのみ入手可能で、コンテンツ数は限られています。音楽再生はローカルコレクションのみをサポートしています。2015年10月のアップデートにより、内蔵ブラウザでNetflixなどのDRM保護コンテンツを閲覧できるようになりました。

SteamOSのハードウェア要件

SteamOSを動作させるための推奨ハードウェア環境は以下の通りです。

IntelまたはAMDの64ビット対応プロセッサ
4GB以上のRAM
200GB以上のハードディスク
NVIDIA（Fermi以降のグラフィックカード）、IntelまたはAMDのグラフィックカード（Radeon HD 5XXX以降）
インストール用のUSBポート
Unified Extensible Firmware Interface (UEFI) ブートサポート

カスタムインストールも可能で、追加設定が必要になりますが、より小さなハードディスクにもインストールできます。レガシーBIOSマザーボードをサポートするISOイメージも存在します。インストーラーはValveのリポジトリから入手できます。

SteamOSの歴史

Valveの共同創設者であるゲイブ・ニューウェルは、2013年9月に「Linuxとオープンソースがゲームの未来である」と述べ、Linuxとゲームを共にしたい開発者を支援していることを表明しました。同年9月20日、Valveは「2014年、Steamユニバースが広がります」という声明を発表し、リビングルームでのSteam利用に向けた3つの発表を行うことを示唆しました。その最初の発表がSteamOSであり、Valveは「お客様に価値を届けるにあたって最適な環境はSteamそのものを基礎として作られたOSであるという結論に至りました」と述べています。SteamOSはユーザーがソフトウェアの一部を変更・交換できる無料のOSであることが強調されました。

2013年10月、Valveはゲーム開発者がSteamOSとSteam Machineを試用しフィードバックを提供する場として、開発者向けカンファレンス「Steam Dev Days」を開催しました。NVIDIAもGameWorks開発スイートを通じてSteamOSをサポートすることを表明しました。

同年11月、ValveはSteamOS専用のゲームを開発せず、他の開発者にもSteamOS専用のゲームを開発させないことを発表し、ユーザーがどこでもゲームを販売できるという哲学に反しないように配慮しました。12月には、SteamOSのベータ版がリリースされました。

2015年10月、Steam MachineブランドのSteam Controller、Steam Link、およびAlienwareの予約注文が開始されました。しかし、Steam Machineは商業的に成功せず、2018年4月に事実上終了しました。

その後もSteamOSの開発は継続され、2021年7月にはSteamOS 3.0を搭載するモバイルゲーム機Steam Deckが発表されました。

パフォーマンス

Phoronixは2013年にSteamOSとWindows 8.1でNVIDIAグラフィックスカードの性能を比較し、LinuxドライバがWindowsドライバと同等の性能を提供できることを示しました。2014年のGameSpotのテストでは、AMDグラフィックスカードにおいてDota 2、Left 4 Dead 2、メトロラストライトがWindowsよりも低いフレームレートで動作しました。NVIDIAグラフィックスカードではメトロラストライトがWindowsよりもわずかに高いフレームレートで動作し、Dota 2はほぼ同じでした。Ars Technicaが2015年に行ったSteamOS 2.0とWindows 10の比較では、SteamOSのスコアは全体的にWindows 10よりも低い結果となりました。

2022年のLinus Tech Tipsのテストでは、Steam Deckを用いてHitman 3、Doom Eternal、Elden RingでSteamOSとWindows 10を比較した結果、平均フレームレートはSteamOSの方が高いという結果が出ました。Tom's Hardwareでは、Shadow of the Tomb Raiderなどのゲームで比較テストを行った結果、SteamOSとWindowsで優位性が分かれる結果となりました。

評価

ゲーム開発者からは、SteamOSは概ね好意的に受け止められました。Minecraftの製作者であるマルクス・ペルソンはSteamOSを「驚くべきニュース」と評し、多くの開発者がLinuxとSteamOSでのゲームサポートに関心を示しています。

一方、OS固有のアプリケーションが必要だという意見や、フリーソフトウェア財団のリチャード・ストールマンは、非フリーなゲームやDRMの使用に対して懸念を示しつつも、SteamOSを支持しています。

SteamOSベータ版のレビューでは、操作性や将来性が評価された一方で、インストールが困難である、機能が不足しているという批判もありました。しかし、ユーザーインターフェースは肯定的に評価され、SteamOSは「肯定的なスタート」と見なされました。一部のハードウェアメーカーは、SteamOSの制約からSteamOSを搭載したマシンの発売を見送りましたが、将来的なパフォーマンスの向上に期待を寄せています。

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