Linux-HA

Linux-HA（High-Availability Linux）は、Linux、FreeBSD、OpenBSDといったプラットフォーム上で、高可用性（HA）クラスターを構築するためのプロジェクトです。このプロジェクトは、これらのシステムにおける信頼性、可用性、そして保守性（RAS）の向上を主な目的としています。

プロジェクトの中核となるのは、Heartbeatというソフトウェアです。HeartbeatはGPLライセンスで提供されているクラスタ管理プログラムであり、以下の様な特徴と機能を持っています。

ノード数の柔軟性: クラスターの規模に制限がなく、大規模なシステムから非常にシンプルな構成まで、様々な規模のクラスターを構築することができます。
リソース監視: システムに障害が発生した場合、自動的にリソースを再起動したり、他のノードに移動させたりする機能があります。これにより、サービスの中断時間を最小限に抑え、可用性を維持します。
フェンシング機構: 障害が発生したノードをクラスターから隔離するフェンシング機構を備えています。これにより、システム全体の安定性を保ち、データの破損や競合を防ぎます。
ポリシーベースのリソース管理: リソース間の依存関係や制約を考慮した、洗練されたポリシーベースのリソース管理が可能です。これにより、複雑なシステム構成でも柔軟なリソース管理ができます。
時間ベースのポリシー: 時間帯によって異なるポリシーを適用できます。例えば、ピーク時とそうでない時で異なるリソース管理戦略を適用するといった事が可能です。
豊富なリソーススクリプト: Apache、DB2、Oracle、PostgreSQLなど、一般的なサービスに対応したリソーススクリプトが用意されています。
GUIツール: リソースやノードの設定、制御、監視を行うためのGUIツールが提供されており、管理作業を効率化します。

歴史

Linux-HAプロジェクトは、1997年11月にメーリングリストでの議論から始まりました。そのきっかけとなったのは、Harald Milz氏が作成した「Linux-HA HOWTO」という文書でした。これは、既存のソフトウェアの利用方法を解説するハウツーではなく、Linux向けのHAソフトウェアを開発する際に考慮すべき技術的な要素をまとめたものです。

Alan Robertson氏はこの文書に触発され、プロジェクトの基礎となるソフトウェアの開発に着手し、1998年3月18日に最初のバージョンが完成しました。その後、1998年10月19日にプロジェクトのウェブサイトが立ち上げられ、1998年11月15日にはソフトウェアの最初のリリースが公開されました。最初のユーザーはRudy Pawul氏で、ISO-NEのウェブサイト構築にこのソフトウェアが使われ、1999年後半には稼働を開始しました。

初期のバージョンでは、2ノードまでのサポート、単純なフェイルオーバー方式、リソース監視機能の欠如など、制約が多くありました。しかし、バージョン2になると、nノードクラスターへの対応、リソース監視機能、依存関係やポリシーの扱いなど、大幅な機能向上が図られました。バージョン2.0.0は2005年7月29日にリリースされ、このバージョンではLinux-HAコミュニティからの多くの貢献が反映され、商用のHAソフトウェアに匹敵する機能を持つに至りました。

関連事項

キャリアグレードLinux
高可用性クラスター

参考文献

Pfister, Gregory F (1998). In Search of Clusters (2nd ed. ed.). Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall. ISBN 0-13-899709-8
Marcus, Evan; Stern, Hal (2003). Blueprints for High Availability (2nd ed. ed.). Indianapolis, IN: John Wiley & Sons. ISBN 0-471-43026-9

外部リンク

Linux-HA-Japan のホームページ
Linux-HA Wiki（日本語）
Linux-HAのメーリングリストのアーカイブ

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