Logorama

ロゴで描かれた世界―短編アニメーション映画『Logorama』

2009年公開のフランス産短編アニメーション映画『Logorama』は、その斬新な映像表現で高い評価を受け、アカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞した傑作です。監督は、フランソワ・アロー、エルヴェ・ドゥ・クレシー、ルドヴィク・ウプランの3名。約15分というコンパクトな尺の中に、濃密な物語と圧倒的なビジュアルが凝縮されています。

本作の最大の特徴は、登場する全てのキャラクター、背景、小道具が、実在する企業のロゴマークで構成されている点です。街並みを形成する建物、乗り物、そして登場人物に至るまで、全てがロゴマークで表現されており、現実世界とは異なる、独特の視覚効果を生み出しています。馴染み深いグローバル企業から、日本を含む世界各国の企業のロゴが使用されており、その数は実に約3000社にも及ぶと言われています。

物語は、テロリストと警察官の対決を描いています。一見すると単純な構図ですが、ロゴマークで表現された世界ならではのユーモラスな演出や、意外な展開が観る者を飽きさせません。例えば、悪役として描かれるマクドナルドのドナルドや、警察官として活躍するミシュランマンなど、企業の代表的なイメージキャラクターが重要な役割を担っています。

特筆すべきは、製作期間のほとんどが、4万種類にも及ぶロゴの中から、作品に使用する3000のロゴを選定する作業に費やされたという点です。膨大な数のロゴから、ストーリーや世界観に合うものを選び抜き、配置していく作業は、並大抵の努力では成し遂げられないでしょう。この地道な作業こそが、『Logorama』の完成度の高さに繋がっていると言えるでしょう。

主要な登場人物について見てみましょう。凶悪なギャング役を演じるのは、マクドナルドのドナルドです。おなじみの「M」のロゴマークも効果的に使用されています。一方、警察官役はミシュランマンが務め、複数登場します。使用されているのは旧ロゴタイプで、レトロな雰囲気を醸し出しています。さらに、ウェイトレス役にはエッソのドロップガール、トラック運転手役にはプリングルズのオヤジが登場。プリングルズのオヤジは、物語の終盤で悲劇的な最期を迎えます。その他にも、ビッグボーイ、ハリボーの子供など、様々な企業のイメージキャラクターが個性豊かなキャラクターとして活躍します。

背景として使われている企業ロゴも多岐に渡り、ピザハット、レゴ、アメリカンファミリー生命保険会社、Kマート、リーバイス、セガ、IKEA、オレオ、ウェンディーズ、メガブロック、任天堂、ホットウィール、タミヤ、EMI、ドミノピザ、セブンイレブン、MTV、吉野家、野村證券、ケンタッキー・フライド・チキン、マイクロソフト、ヤマハ、IBM、バンダイ、デルなど、世界的に有名な企業のロゴが多数登場します。特に任天堂のロゴは、バスのドアにも使用されており、細部まで作り込まれた世界観が見て取れます。

驚くべきことに、登場する3000もの企業ロゴの使用は全て無許可で行われました。通常であれば商標権侵害となる行為ですが、各企業は作品への理解を示し、黙認したとのことです。ミシュランの広報担当者は、「クリエイティブな作品に使われるなら構わない」と快諾した一方、ドナルドを起用したマクドナルドからは回答が得られなかったというエピソードも興味深い点です。

『Logorama』は、企業ロゴという身近な素材を用いながら、社会風刺やユーモアを織り交ぜ、観る者に深い印象を与える作品です。その独創性と完成度の高さは、高く評価されて然るべきでしょう。Vimeoや公式サイト、IMDbなどで視聴できるので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

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