M103 (天体)

散開星団 M103

M103は、カシオペヤ座の領域に輝く散開星団です。この星団は、シャルル・メシエ自身によって編纂されたメシエカタログにおいて、最後に加えられた天体の一つとして知られています。当初、1783年に出版される予定だったカタログはM100までをまとめる計画でしたが、出版までの間に新たに発見されたM101からM103が急遽追加され、最終的にこの星団がカタログを締めくくる形となりました。

M103を観測する際、双眼鏡でもその存在自体は確認できますが、個々の星を識別するのは難しく、かすかな光の集まりとして捉えられる程度です。口径8cmクラスの望遠鏡を用いると、星団は星雲状に見え始めます。より詳細に個々の微星を観るためには、最低でも口径10cmの望遠鏡が必要となります。口径10cmの屈折望遠鏡での観測では、「壮観であり、矢の頭のようだ」と表現された記録も残っています。この「矢の頭」に見える特徴的な形は、一つの赤色星と二重星であるStruve 131を結ぶ線によって形作られているとされます。

この星団が位置するカシオペヤ座の領域、特にδ星とε星の間には、M103と似たような星の集まりが数多く存在します。そのため、しっかりと位置を確認しないと他の星団と見間違えやすい傾向があります。この周辺に点在する散開星団の中でも、特にNGC 663は最大の星団であり、その光度や星の数もM103を凌ぐほど豊富です。NGC 663は双眼鏡でも容易に観測できるため、M103を紹介する際に、NGC 663の写真や情報が誤って記載されている書籍やポスターなども見受けられるほど、混同されやすい存在です。

M103の発見は1781年にピエール・メシャンによってなされました。メシャンは発見時、「カシオペアの足にあるδ星とε星の間にある星団」と記しています。その後の観測者たちもM103に注目しました。ジョン・ハーシェルは「明るく、かなり大きい」と評価しました。ウィリアム・ヘンリー・スミスはより詳細な観測を行い、「均整がとれている」とし、星団内には二重星Struve 131（黄色と青のペア）が存在すること、星団が扇形をしており、北後続方向に星が明確に分岐していること、そして多数の星の流れが見られること、主な枝の星が7等から9等程度であること、明るい8等星の赤い星が南に続いていることなどを記録しています。また、トーマス・ウィリアム・ウェッブは、M103がカシオペヤ座δ星からわずか1度ほど北に位置しており、視野内にはStruve 131と赤い星が含まれていて「美しい視野」であると述べています。

このようにM103は、メシエカタログの歴史的な側面を持つだけでなく、その観測における見え方の変化や、周辺の豊かな星団との関係性、そして過去の著名な観測者たちによって記録された詳細な特徴など、多角的な興味をそそる天体と言えるでしょう。

もう一度検索