M107 (天体)

M107、あるいはNGC 6171として知られる天体は、へびつかい座の領域に輝く球状星団です。

この星団は、著名なメシエカタログに収められた天体の中では、比較的後になってリストに加えられた対象の一つとされています。星の集まりとしてはまばらな印象ですが、小さくまとまって見えるため、双眼鏡レベルの観測では個々の星を分離することが難しく、ぼんやりとした星雲のように観測されるのが特徴です。

へびつかい座には、全部で七つのメシエ天体が存在し、これらはいずれも球状星団ですが、M107はその中でも見つけにくい、淡い対象であると言われています。

観測者によって見え方の報告は異なりますが、アメリカのアマチュア天文家、ジョン・マラス氏は、口径10cmの望遠鏡で個々の星が確認でき、外側部分は粒だったザラザラとした感じ、中心部は楕円形に見えたと記述しています。

しかし一般的には、口径20cm程度の望遠鏡を用いても、周辺の微かな星々がようやく見え始める程度であり、口径30cmクラスの望遠鏡でも中心部が個々の星に分離して見えないことが多いようです。星団の中心部分まで完全に分離して観測するには、口径40cmクラスの大型望遠鏡が必要になるとされています。

M107の発見は、1782年4月にフランスの天文学者ピエール・メシャンによって記録されました。しかし、メシエによって1784年に刊行されたメシエカタログの第三版には、この星団は記載されていませんでした。

メシャンの発見が広く知られることのないまま、1793年5月12日には、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルも独立してM107を発見しています。ハーシェルは自身の観測記録において、「非常に美しく、多数の星が密集しており、視直径は5分から6分角程度に見える。中心部に向かうにつれて星の密集度が増している」と記し、さらに星団の周辺に5つの明るい星が見えることにも言及しています。

長らくメシエカタログに載らない天体でしたが、1947年になって、カナダの天文学者ヘレン・ソーヤー・ホッグにより、同じくメシエの発見記録がありながらもカタログから漏れていたM105、M106と共に、M107が正式にメシエカタログに加えられることとなりました。

このようにM107は、発見から公式なカタログ登録までに長い時間を要した、観測史においても興味深い球状星団です。

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