M110 203mm自走榴弾砲

M110 203mm自走榴弾砲の概説

M110 203mm自走榴弾砲は、アメリカで1950年代に開発された自走砲であり、203mm（8インチ）榴弾砲を装備しています。この兵器は、同時期に開発されたM107 175mm自走カノン砲と共に、共通の車台を用いた兄弟車種の一つです。

開発の背景

M110は、M53 155mm自走カノン砲やM55 203mm自走榴弾砲の後継機として位置づけられ、M107とともに1956年から開発が進められました。試作車両は1958年に完成し、その後エンジンの変更を経て1961年に正式に制式採用されました。その開発にあたり、航空機による空輸を考慮した設計が要求され、小型化が図られています。

走行装置は、M113装甲兵員輸送車の設計を流用し、エンジンもM109 155mm自走榴弾砲と共通です。車体は前部に機関部を配置し、中央から後部に砲を剥き出しで載せています。このため、NBC防護などの仕様は考慮されていません。弾薬は最大で2発しか搭載できず、13名の要員のうち8名は弾薬を運ぶ別の車両に乗る必要があります。このため、M110は自走砲架とも呼ばれています。発射時の反動を抑えるため、車体後部には大きな駐鋤が装備されています。

実戦投入

アメリカ陸軍は、1963年にM110を配備し、M107やM109と共にベトナム戦争で実戦に投入しました。1977年には砲身を改良し、M201榴弾砲を搭載したM110A1が配備開始され、その後も改修を経てM110A2仕様へと進化します。

湾岸戦争では、アメリカ軍の大部分がM109に統一されていたものの、M110は一部の部隊で実戦に使用されました。また、イスラエル国防軍は36両の初期型M110を導入し、1973年の第四次中東戦争や1982年のガリラヤの平和作戦で運用しました。さらに、イランもM110を調達し、イラン・イラク戦争で役立てました。

日本におけるM110の運用

日本では1983年からM110A2をライセンス生産し、1984年度から「203mm自走りゅう弾砲」として陸上自衛隊に配備されました。91両が配備され、特科部隊で使用されました。運用を支えるために87式砲側弾薬車が随伴し、弾薬の輸送を行いました。

2000年には「サンダーボルト」の愛称が付けられましたが、配備部隊内では「自走20榴」とも称されていました。2019年度の防衛白書で、M110A2が用途廃止となることが告知され、2024年には全車が退役する見込みです。

バリエーションと関連情報

M110の後継車両であるM110A1およびM110A2は、砲の換装や信頼性向上が図られ、他国でも採用されました。廃棄されたM110の砲身は、他の軍事用途に再利用されることもありました。

また、M110は映像作品やゲームにも登場し、日本映画の中では『ゴジラ』シリーズや『陸上防衛隊まおちゃん』などでその姿が見られました。音楽にはチャイコフスキーの「1812年」などで使用されることもあり、独特の存在感を持つ自走砲としての位置づけを確立しています。

M110は、米国だけでなく海外でも運用され、多様な歴史を持つ兵器として知られています。

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