M107 175mm自走カノン砲

M107 175mm自走カノン砲

M107 175mm自走カノン砲は、1950年代にアメリカで開発された長砲身の175mmカノン砲M113を搭載した自走砲です。1960年代から70年代にかけて、アメリカ陸軍や輸出先の友好国で使用されました。M110 203mm自走榴弾砲とは、共通の車台を使用する兄弟車種です。

開発の経緯

M107とM110は、第二次世界大戦末期に登場したM40 155mm自走カノン砲や、1950年代前半に実用化されたM53 155mm自走カノン砲、M55 203mm自走榴弾砲の後継として、1956年に開発が始まりました。1950年代前半には、M53やM55と同系列の車体に60口径175mm砲を搭載したT162 175mm自走カノン砲が試作されましたが、量産には至りませんでした。

M107の開発時の形式名はT235で、M110はT236と呼ばれていました。試作車両は1958年に完成し、1959年にはエンジンをディーゼルに換装してT235E1となりました。1961年に175mm Self-propelled Gun M107として制式採用されています。

特徴

M107とM110は、車体コンポーネントの共通化の他に、空挺輸送能力も求められました。そのため、巨大な砲を搭載しているにもかかわらず、車体は比較的小型軽量に設計されています。装甲化された戦闘室などの防御設備は装備されていません。小型化の結果、車体上に搭載できる弾薬は2発（資料によっては4発）のみであり、M548などの随伴車両による弾薬補給が不可欠でした。運用に必要な砲兵は13名ですが、車体に乗れるのは5名のみで、残りの人員は随伴車両に搭乗する必要がありました。

車体はM107/M110専用に新設計されましたが、搭載されるディーゼルエンジンは、先に開発されていたM108 105mm自走榴弾砲およびM109 155mm自走榴弾砲と共通です。サスペンション構造はM113装甲兵員輸送車の設計を流用するなど、共通化と低コスト化が図られました。

M107は1961年から1980年までに524両が製造され、アメリカ軍および輸出先の友好国で使用されました。最大射程32.7kmは、当時の自走砲としては最大級でした。

実戦での活躍

アメリカ軍はベトナム戦争において、1965年からM107を実戦投入しました。1968年のケサンの戦いなどで活躍しましたが、1970年代後半には弾薬の共通化などを目的に、運用機種をM110に統一することになり、M107は友好国への輸出に回されるか、あるいは搭載砲を203mm砲に換装してM110A1またはM110A2に改修されました。

イスラエルはM107を200両程度導入し、"Romach"（ロマク、ヘブライ語で槍の意味）というニックネームを与え、1973年の第四次中東戦争で実戦投入しました。M107は、シリア軍やエジプト軍の地対空ミサイルサイトの制圧に効果を発揮しました。

イランに輸出されたM107は、北朝鮮製のM1978 コクサン 170mm自走砲と共に、イラン・イラク戦争で使用されました。

バリエーション

M107/M110の派生型として、装甲回収車型のM578軽回収車が存在します。

運用国

アメリカ合衆国：アメリカ陸軍、アメリカ海兵隊が使用。ベトナム戦争で実戦投入。
イスラエル：イスラエル陸軍が約200両を導入し、第四次中東戦争で実戦投入。ラトルン戦車博物館、イスラエル砲兵隊博物館に実車を展示。
西ドイツ
ギリシャ：36両を導入。24両は後にM110A2に改修。
イラン：イラン・イラク戦争で実戦投入。導入数は42両と見られる。2010年の軍事パレードにおいてM110と共に姿を見せている。
イタリア
韓国：24両を導入。2008年に退役。
トルコ
スペイン：12両を導入。1990年代前半にM110A2に改修。
イギリス
* ベトナム：アメリカ軍から鹵獲したM107をベトナム人民軍が使用。現在もベトナム国内のいくつかの軍事博物館に実車が展示されている。

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