M1920 14インチ列車砲

14-インチM1920列車砲：アメリカ陸軍最後の列車砲

14-インチM1920列車砲は、アメリカ陸軍が開発・配備した最後の列車砲であり、その設計思想は、従来の列車砲とは一線を画していました。特に、その台車構造は、状況に応じた柔軟な運用を可能にする革新的なものでした。

概要

M1920列車砲の最大の特徴は、その台車にあります。従来の列車砲は、基本的に固定された場所での運用を前提としていましたが、M1920は、必要に応じて設置・撤去が可能な台車を採用することで、運用範囲を大幅に拡大しました。

具体的には、沿岸要塞には専用の固定砲架が設置され、M1920の車輪部分は台枠から取り外せるようになっていました。車輪を取り外した後、砲は360度回転可能な旋回台に載せられ、沿岸防御において敵艦を正確に狙い撃つことができました。この旋回台の存在により、M1920は従来の列車砲と比較して、より広範囲の目標に対応できるようになったのです。

また、M1920は、カーブしたレール上を移動できるという利点も持っていました。これにより、砲をより適切な射撃位置に移動させることができ、戦術的な柔軟性が向上しました。

配備と運用

M1920は、主にアメリカ本土の沿岸防衛と、パナマ運河の防衛に配備されました。ロサンゼルスの港湾防衛を担うマッカーサー要塞には2門が配備され、パナマ運河地帯のグラント要塞とランドルフ要塞にも2門が配備されました。パナマに配備されたM1920は、パナマ地峡鉄道を利用して、太平洋側と大西洋側の両岸に迅速に移動することが可能でした。これにより、パナマ運河の防衛体制は大幅に強化されました。

退役

第二次世界大戦の終結後、アメリカ本土やパナマ運河が攻撃を受ける可能性は著しく低下しました。そのため、M1920列車砲は、その役目を終え、全てが処分されました。しかし、M1920の開発で得られた技術や経験は、その後のアメリカ軍の火砲開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

M1920列車砲は、アメリカ陸軍が運用した最後の列車砲として、その歴史に名を刻んでいます。その革新的な設計思想と、柔軟な運用能力は、現代の火砲開発にも通じるものがあると言えるでしょう。

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