M20装甲車

M20装甲車の概要

M20装甲車は、アメリカのフォード社によって開発された汎用の装輪装甲車です。この車両は、M8装甲車の派生型として誕生し、主に砲塔を撤去したデザインが特徴です。1943年から1945年にかけて、約3,800両が生産されました。

構造とデザイン

M20装甲車は、M8の基本的な構造を踏襲しつつも、砲塔が取り除かれたことで全体が軽量化されています。車両の床面は、左右に設置された木製のベンチシートがある兵員室になっており、標準で最大4名の兵員が収容可能です。さらに、兵員室の上部には、全方位に旋回可能なリングマウントが装備され、ここに12.7mm重機関銃M2が搭載されています。この機関銃には、約1,000発の弾薬が常時装填される構造となっています。また、運転装置やエンジンもM8装甲車と同じものが使用されているため、基本的な性能は類似していますが、軽量化により機動力が向上しています。

運用とバリエーション

運用面においてM20装甲車は、外見上はM8とほとんど変わりませんが、実際には2つの主要なバリエーションがあります。1つは通信機を搭載した観測/指揮型で、もう1つは輸送型です。観測/指揮型は、機甲部隊の指揮車両や砲兵部隊の観測車両として使用され、一方、輸送型は主に部隊の移動や警護に用いられました。指揮型には、パットン将軍が乗るために用意された指揮車両もあり、戦場の指揮を取る重要な役割を担いました。

M20装甲車は、戦後も多くの国に供給され、イギリス軍や自由フランス軍を含め、多くの軍隊で活躍しました。また、NATO諸国にも供与され、軍事用途だけでなく、警察用の装甲車両としても広く利用されました。中にはエンジンがディーゼルに換装されたり、対戦車ミサイルを装備した車両も存在しています。

陸上自衛隊における運用

陸上自衛隊の前身である警察予備隊には、設立当初からM20装甲車も供与されました。当初はM8装甲車と共に合計100両以上の供与が計画されていましたが、韓国戦争から得た教訓により、戦車装備が必要不可欠であると判断され、最終的には少数の供与にとどまりました。警察予備隊から保安隊に改編された後、M20装甲車は様々な部隊で使用されましたが、日本の道路事情からその高速性能を活かす機会は少なくなり、1960年代の終わりまでに全車両が退役しました。最終的には、警察側での運用も検討されましたが、オープントップのデザインが火器に対して脆弱であるという理由から、この案は見送られました。

映画やメディアへの登場

M20装甲車は、映画やゲームなどのメディアにも登場しています。たとえば、映画『戦略空軍命令』ではフォートワース空軍基地の警備隊として登場し、また『ダイハード』でも警察車両として視覚的な印象を残しました。

まとめ

M20装甲車は、アメリカの汎用装輪装甲車として多くの任務を担い、多国籍での運用も見られました。特に軽量化に伴う機動性の向上や、戦場における指揮車両としての役割は、歴史的に注目されるポイントです。

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