M29 ウィーゼル

M29ウィーゼル：雪上を駆ける多用途装軌車両

M29ウィーゼルは、第二次世界大戦中にアメリカで開発された軍用装軌車両です。雪上での特殊作戦を想定して開発された雪上車であり、その高い走破性から様々な戦線や極地探検で活躍しました。

開発の経緯

ウィーゼルの開発は、イギリス人科学者ジェフリー・パイクが提案した「プラウ計画」に端を発します。この計画は、ノルウェーにおける枢軸軍への攻撃を目的としており、雪上を迅速に移動できる軽量高速輸送車の必要性が提唱されました。スチュードベーカー社が開発を担当し、180日以内の製造開始という条件のもと、試作車がわずか60日未満で完成しました。改良を重ねた結果、1943年11月にM29輸送車として制式採用されました。

初期型と後期型では履帯の幅が異なり、後期型では水上航行能力を強化したM29Cウォーターウィーゼルが開発されました。M29Cは、前後にフロートを設け、二枚舵を追加することで、安定した水上航行を可能にしました。

戦場での活躍

プラウ計画は実現しませんでしたが、M29はその高い走破性から、雪上だけでなく、泥地、砂地、沼地など、通常の車両が走行困難な地域で重宝されました。ヨーロッパ、太平洋、アラスカなど、様々な戦線に投入され、軽輸送車、指揮車、通信車、救急車、電話線敷設車など、多岐にわたる任務に使用されました。第二次世界大戦終結までに約15,000両が生産されました。

極地探検での活躍

1950年代に入ると、M29はその雪上走破性から、極地探検用の車両として注目を集めました。各国の探検隊によって広く使用され、南極や北極の探検に貢献しました。

フランス軍での運用

太平洋戦争終結後、フランス軍は余剰となっていたM29Cを購入し、インドシナに投入しました。「クラブ」（カニ）の愛称で呼ばれたM29Cは、不整地での高い機動力を活かし、田園地帯での偵察や襲撃に用いられました。

フランスの極地探検家ポール・エミール＝ヴィクトルは、1948年のグリーンランド遠征と1949年のアデリーランド遠征でM29Cを初めて使用しました。その後、長らく極地探検隊で使用されましたが、1967年に後継車両であるホチキスHB40への更新が開始されました。

日本での影響

第二次世界大戦後、進駐軍が持ち込んだM29Cは、日本の雪上車開発の参考となりました。1950年に設置された警察予備隊では、アメリカ軍から供与されたM29Cを北海道方面で運用しました。その後、自衛隊で60式3t雪上車が採用され、国産雪上車の開発へと繋がりました。

各型

T-15：試作車両
M28 (G154)
M29 (T24)：フロートなし
M29C：フロート付き
M29C Type A：正面に向けたM20 75mm無反動砲付
M29C Type B：側面に向けた75mm無反動砲付
M29C Type C：正面に向けたM3 37mm砲付

性能諸元

戦闘時重量：2,019 kg
エンジン：スチュードベーカー製 6-170 チャンピオン（直列6気筒、2,779cc、70馬力）
燃料タンク容量：130L
* 航続距離：約266km

M29ウィーゼルは、その高い走破性と汎用性から、第二次世界大戦から極地探検まで、様々な場面で活躍した多用途装軌車両でした。

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