M32 戦車回収車

M32戦車回収車

M32戦車回収車（M32 TRV）はアメリカ製の装甲回収車で、戦場での故障した戦車を回収したり、応急修理を行ったりするために設計されています。M4中戦車をベースにしており、装甲部隊の支援に重宝されました。この車両は、第二次世界大戦の後半から朝鮮戦争にかけて使用され、戦闘部隊へと広く配備されました。

概要

M32戦車回収車は、M4中戦車を基にした回収車両であり、特に故障や損傷した戦車の救出を目的としています。本車両は1943年に制式化され、1944年から戦闘部隊へと配備が進められました。その特性から、M32は多様な改良型や派生型が開発され、使用されてきました。約1,500両が生産され、数多くの国へ供与されました。

開発と運用

M32は、M3中戦車の後継として開発され、M4中戦車が制式化されたことに伴って1940年代初頭に設計がスタートしました。1943年には試作車両が完成し、同年の12月9日にM32が制式化されました。量産型としては初のモデルにM32B1があり、1944年までにおよそ1,500両が生産されました。これらの車両は、戦場において即座に戦闘支援ができる装備として各部隊に展開されました。

運用開始は1944年3月からで、特にM4及びその派生型搭載部隊で重宝されましたが、M31回収車との併用がされており、一部の部隊ではM31の方が評価が高いとの意見もありました。朝鮮戦争の際も使用され、1950年代初頭には後継機のM74戦車回収車が制式化されるまで主力として活躍しました。退役は1950年代末にかけて進められ、それからは多くの国で民間用途に転用されました。

特徴

M32の外観はM4中戦車を基にしており、砲塔を取り払いウインチを装備した車両です。全長や全幅はM4とほぼ同じで、重量も加味されています。最大牽引力は約72,000ポンドに達し、ウインチは60,000ポンド近い牽引力を持っています。さらに、クレーンの起倒はAフレーム構造を採用しており、定位置から物資を吊り上げることが可能です。戦場での安全性を考慮し、開口部には重機関銃を装備し、守られた装甲室となっています。

各型と派生型

M32には複数の派生型が存在しており、具体的にはT5、M32A、M32B1などがあります。T5は試作車として製作された際に、初期型の装甲車体が使用された経緯があります。M34砲牽引車に改装された型もあり、実質的にはM32を基にしています。これらにより、M32は多様なバリエーションを持ち、各国の要求に応じて改良され続けました。

陸上自衛隊での運用

陸上自衛隊には、1954年よりM32が供与され、戦車・自走砲部隊で広く使用されました。特に、61式戦車の導入後も1970年代まで運用を継続し、1980年までに全車が退役しました。

まとめ

M32戦車回収車は、その特異な設計と高い牽引能力により、戦場でのニーズに応える重要な役割を果たしました。その後継型のM74も登場し、冷戦期にはさらに進化を遂げていきます。これらの装甲回収車は、戦闘支援だけでなく、世界各国の装甲部隊の標準装備となりました。

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