M44 (装甲車)

M44汎用装甲車

M44汎用装甲車（M44 AUV：Armored Utility Vehicle）は、アメリカで開発された装甲兵員輸送車です。第二次世界大戦において、戦車に随伴できる装甲防御を備えた兵員輸送車の必要性が認識されたことを背景に開発されました。

開発の経緯

1944年1月、アメリカ陸軍は軽戦車の車台を流用した対戦車砲牽引車と指揮・偵察車の開発を決定しました。同年6月には、M18戦車駆逐車の車台を流用したT41の生産が承認され、10月から生産が開始されました。翌月にはM39多目的装甲車として制式化されましたが、オープントップ式の構造であり、乗降は車体上部から行う必要がありました。

同年11月9日には、M24軽戦車の駆動装置と走行装置を流用した多目的汎用装甲車T13の開発が承認されました。T13は密閉式のキャビンを備えていました。また、T13の非装甲貨物輸送車型としてT33が提案されましたが、M24軽戦車のエンジンでは力不足と判断され、T13の開発計画は1945年3月22日に中止されました。

そこで新たな汎用装甲車として、キャデラック社によってT13を大型化したような形状で、M18戦車駆逐車の駆動装置と走行装置を流用したT16の開発が1945年4月5日に開始されました。1945年6月までに6両の試作車が完成し、最大16mmの装甲を備え、3名の乗員に加えて24名の兵員を輸送可能で、最大時速50kmで走行できました。

同年8月にはM44として制式化されましたが、運用試験の結果、軍の要求するサイズ・重量、および搭載能力を超過していると判断されました。試作車に続いて少数の先行量産車が製造されましたが、本格量産には至りませんでした。エンジンと変速装置をM41軽戦車と同じものに変更し、各所の設計を改良したM44E1も製作されましたが、これも試作のみで量産はされていません。

アメリカ陸軍はM44の設計思想を継承しつつ、半数の12名（ライフル小隊の1個分隊を構成する人数）を輸送できる、より小型の車両を求めました。この要求に基づいてT18が開発され、M75装甲兵員輸送車として制式化されました。

各型および派生型

T16: 試作型。6両が生産されました。
M44: 制式型。少数のみ生産されました。
M44E1: 車体機銃を廃止し、側面ドアを側方および上面の2分割式から側面のみの1枚板方式に変更、各所の銃眼と視察孔を廃止。エンジンをコンチネンタル AOS-895-1 水平対向6気筒空冷スーパーチャージャーガソリンエンジンに、変速装置をCD500クロスドライブトランスミッションに変更。履帯をダブルピン・ダブルブロック型のT87に変更した改良型。試作1両のみで量産はされませんでした。
T35: 4.2インチ迫撃砲を搭載する自走迫撃砲型。計画のみで試作車は製作されませんでした。

参考文献

デルタ出版
『グランドパワー10月号別冊 世界の軍用車輌(3) 装軌／半装軌式戦闘車両：1918～2000』 2000年
『グランドパワー 2018年2月号 No.285』2017年
「戦後の米軍装甲兵員輸送車」文：後藤仁

関連項目

装甲兵員輸送車
M75装甲兵員輸送車

外部リンク

* THE AFV DATABASE＞AUV M44

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