M63 (天体)

M63（ひまわり銀河）

M63、またの名をNGC 5055は、北天のりょうけん座に輝く美しい渦巻銀河です。その姿がまるで花開いたヒマワリに似ていることから、「ひまわり銀河（Sunflower Galaxy）」という愛称で広く知られています。

概要

この銀河は、私たちの天の川銀河とほぼ同じ、およそ10万光年にも及ぶ直径を持っていると考えられています。宇宙における銀河の集団である「銀河群」において、M51銀河群の一員であり、有名なM51（子持ち銀河）やM101（回転花火銀河）などと同じグループに属しています。

M63の大きな特徴の一つは、その渦巻構造が比較的天体観測の初期から認識されていた点です。1850年には、高名な天文学者ロス卿が渦巻構造を発見した14の銀河の中に含まれており、その独特の形態は古くから天文学者たちの注目を集めていました。

観測のポイント

M63は、比較的容易に見つけられる明るさを持つ銀河です。一般的な双眼鏡でも、恒星とは異なる広がりのある天体として識別することが可能です。

口径5cm程度の小望遠鏡を用いると、かすかな星雲状の天体として見え始め、中心に輝く小さな光（銀河の中心核）が確認できます。口径10cmクラスになると、中心核がより明るく際立ち、その周囲を淡い楕円形の光芒が包んでいる様子がわかります。条件が非常に良い夜には、銀河の端の一部が尖って見えることがあるかもしれません。

さらに口径が大きくなり、20cmクラスの望遠鏡を使うと、中心部を取り巻くかすかな腕状の構造、すなわち渦巻腕の兆候が見え始めます。望遠鏡の口径を大きくするにつれて、この渦巻腕の構造は次第に明瞭になり、ひまわり銀河の名の由来となった独特の模様が鮮やかに浮かび上がってきます。ただし、銀河のすぐ近くに見える8等星は、M63とは物理的に無関係な前景にある星であり、混同しないように注意が必要です。

また、この銀河では過去に超新星が観測されています。1971年5月25日には、SN 1971Iと呼ばれる超新星が出現し、詳細な研究が行われました。

観測史

M63は、1779年6月14日にフランスの天文学者ピエール・メシャンによって発見されました。シャルル・メシエは自身のカタログにこれをM63として収録しましたが、その記述は「メシャンが発見した星雲状天体である。かすかでM59と同程度に見え、星を含まない。測微尺のかすかな照明でも消えてしまう。近くには8等星が見える」というもので、あまり目立たない天体として評価していたようです。

しかし、後の観測者たちは異なる印象を持っています。例えば、ウィリアム・ハーシェルはM63を「非常に明るく、北から南西の方向に広がっている。また、非常によく輝く核を持っている」と記述しており、メシエよりも明るく、特徴的な構造を持つ天体として捉えていたことがわかります。

前述の通り、その渦巻構造はロス卿によって早期に認識されており、初期の望遠鏡による観測技術でも、その特異な形状が捉えられていたことが伺えます。

名称の由来

「ひまわり銀河」という親しみやすい通称は、M63が持つ顕著な渦巻模様が、太陽に向かって咲くヒマワリの花びらの配列に似ていることから名付けられました。英語圏でも同様に「Sunflower Galaxy」と呼ばれており、その特徴的な外見を表す非常に的確な名称として広く受け入れられています。

M63は、その美しい渦巻構造、比較的容易な観測可能性、そして魅力的な愛称により、多くの天体観測愛好家にとって人気のターゲットとなっています。双眼鏡から大口径望遠鏡まで、様々な機材でその姿を楽しむことができる銀河です。

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