M72 (天体)

球状星団M72 (NGC 6981)

概要

みずがめ座に位置するM72（カタログ番号NGC 6981としても知られる）は、比較的密度が高くない、まばらな印象を持つ球状星団です。この星団は、2013年の観測で49個の変光星が同定されるなど、動的な特徴も示しています。

観測による見え方

M72の見え方は、観測に用いる望遠鏡の口径に大きく左右されます。口径5cm程度の小型望遠鏡では、M72は小さく円形のぼんやりとした光のしみのように見え、個々の星を分離して識別することは不可能です。口径が10cmに増えると、像はより大きく広がりますが、依然として円形の星雲状に見え、内部の構造や明るさの濃淡はほとんど識別できません。この段階でも、経験豊富な観測者であるマラスは、表面がわずかにざらざらしているかのような微細なテクスチャを感じ取っています。

口径20cmクラスの望遠鏡を用いると、条件が良ければ、かろうじて星団を構成する個々の星らしき、微細な粒状の構造がわずかに見え始めてきます。しかし、中心部は依然として密集しており、完全に星を分離することは困難です。さらに口径が30cm以上の大型望遠鏡を用い、良好な観測条件下で高い倍率を適用した場合に初めて、中心部を含めた星団全体を構成する多数の星々を一つ一つ分離された像として明確に観測することが可能になります。

観測史

M72は、1780年8月29日から30日にかけて、フランスの天文学者ピエール・メシャンによって初めて発見されました。その後、同年10月にはシャルル・メシエがこの天体を確認し、自身の作成した有名な天体カタログにM72として登録しました。メシエは発見者メシャンの報告に基づき、M72がやぎ座の「首」のあたりに位置すること、そして自身が先にカタログに加えた球状星団M71と同様にかすかに見える天体であると記録しています。

1810年には、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルが自身の建設した40フィート（約12メートル）の巨大な望遠鏡を用いてM72を観測しました。彼は、M72を「非常に明るく、外形が明確な円形の星団」と描写し、中心部から少し離れた領域には微かな星々が広がっていること、そして中心部は非常に密集しているものの注意深く観察すれば個々の星が見分けられることを記しています。さらにハーシェルは、視野内に見える星々の明るさが多様であり、通常球状星団を構成するような淡い星だけでなく、それとは異なる種類の星も含まれている可能性に言及しています。

イギリスの天文学者ウィリアム・ヘンリー・スミスもM72を観測しており、これを「微かな星が集まってできた球状星団」と表現しています。彼は、この星団を含む視野には多くの他の星が観測されること、星団のすぐ近くには一組の重星が伴っていること、そして星団の南約7分角の位置には同じメシエカタログ天体であるM73が存在することを記録しています。これらの観測記録は、初期の天文学者たちが限られた機材の中で、このかすかな球状星団の姿をどのように捉えようとしていたかを示しています。

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