M728戦闘工兵車

M728戦闘工兵車

M728戦闘工兵車（M728 Combat Engineer Vehicle）は、M60パットンの車体をベースに開発された戦闘工兵車です。戦車を流用した車体に、ドーザーブレードやクレーン、破砕砲などを搭載し、戦場における様々な工兵作業を支援します。

開発の背景

第二次世界大戦以来、アメリカ軍では戦車にドーザーブレードを装着した車両を工兵作業に使用していました。しかし、これらの車両はあくまで戦車の派生型であり、専門的な工兵任務には不向きな点が多くありました。そこで、M48パットン戦車の車体を流用した戦闘工兵車両の開発が決定されました。

当初はT95戦車の車体を流用する計画でしたが、T95の開発中止に伴い、M48戦車の発展型であるXM60の車体をベースとしたT118E1が開発されました。1965年から1966年にかけて部隊での実用試験が行われ、1967年にM728として正式採用されました。

特徴

M728は、前部に油圧式のドーザーブレード、砲塔の側面にA型フレームのクレーンを装備しています。また、ウインチや地雷除去用のレーキも装着可能です。これらの装備により、障害物の除去、陣地の構築、車両の回収など、幅広い工兵作業に対応できます。

砲塔はM60A1/A3戦車と同型ですが、主砲は105mm M68戦車砲から、165mm M135破砕砲に換装されています。この破砕砲は、イギリスのセンチュリオンAVREに搭載されたものと同系統で、コンクリートの壁や障害物を破壊するのに有効です。同軸機銃としてM73機関銃、車長用キューポラにはM85機関銃を搭載しています。

運用

M728は、アメリカ軍の他、M48/M60戦車を導入した国にも輸出・供与されました。ベトナム戦争、湾岸戦争などの実戦にも参加しましたが、M1エイブラムスなどの新型車両に随伴するには機動力が不足していることが判明し、アメリカ陸軍では退役が進められました。しかし、FBIやATFなどの法執行機関では、現在も少数ながらM728を保有しています。1993年には、テキサス州ウェーコで起きたブランチ・ダビディアンの包囲作戦で使用され、催涙ガスの注入や壁の破壊に利用されました。

後継

アメリカ軍では、M1エイブラムスをベースにしたM1グリズリー戦闘工兵車がM728の後継となる予定でしたが、グリズリーの開発計画は中止されました。現在では、M1パンサーII地雷処理車やM1 ABV突撃啓開車が、限定的ながらM728の役割を担っています。M728は、陸軍州兵では現役を退き、陸軍予備部隊においても予備車両として保管されています。

運用国

アメリカ合衆国
エジプト
オマーン
サウジアラビア
シンガポール
モロッコ
ポルトガル

関連項目

戦闘工兵車
* M1 ABV

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